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期待から一転「トランプ不安」が米金融政策の足を引っ張る

安定しているように見えたのに…

最近、9月に米国の連邦準備理事会(FRB)が、バランスシートの縮小の決定を行うと見る市場参加者が増えてきた。

一方で「12月の利上げは容易ではない」との観測が増えている。その証拠に、金融市場が織り込む12月の利上げ確率は、今のところ4割程度にとどまっている。

米国の景気が成熟期を迎える中、株式市場はそろそろピークを迎えつつあるとの見方が有力になっている。他方、インフレ期待は盛り上がらず、FRB内部にも次の利上げは慎重に検討すべきとの意見がある。それに加えて、トランプ大統領の政権運営能力にも疑問符が付き始めている。

政権運営能力への不安

リーマンショック後の米国経済は生産性が上がらず、以前のように賃金が増えないという状況が続いている。これが米国の消費支出を抑制する要因の一つとされている。生産性が高まれば賃金も増加し、FRBが目標とする2%のインフレ率が達成されると考える経済学者は多い。しかし、どうすれば生産性の改善が達成できるかに関する見解はまとまっていない。

過去の大まかな傾向を振り返ると、経済成長率が上昇してきた時期には生産性は上昇し、それに呼応するようにインフレ率も高まってきた。過去の傾向が示唆することは、政府が減税などを通して企業の成長を促すことが実質ベースでのGDP成長率を高め、それが生産性の改善に寄与するということだ。

 

それゆえ、トランプ大統領が主張してきた税制改革は重要だった。問題は、大統領自身が経済の基本的なロジックを理解していないように見えることだ。

それだけでなく、トランプ大統領はビジネスと国家間の交渉を同じ様に扱う誤った認識を持っている。ここへ来ての差別問題に対する同氏の発言は、米国社会の分裂を助長し共和党や議会との関係も悪化している。

同氏は、メキシコ国境に壁を建設する財源が確保できないなら、政府機関の閉鎖も辞さない構えを示し、政治不安は一段と高まっている。

この状況では、成長の底上げにつながる政策への期待を維持するのは難しい。市場参加者は景気回復の継続を念頭に行動するのが困難になり、徐々にリスク回避的な動きが優先される可能性がある。