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サッカー

「楽をすれば衰えがくる」39歳、中村俊輔が走り続ける理由

「無理をすること」は悪いことではない

全く衰えないスタミナ

好調ジュビロ磐田をけん引する中村俊輔のイメージと言えば、華麗なテクニック、正確なパス、そしてゴールネットを揺らす直接フリーキックだろうか。魔法の左足は健在どころか磨きが掛かっている印象がある。

彼は6月で39歳になった。驚くのはそのスタミナ、その走力だ。

技術に年齢は関係ないとよく言うが、体力は年齢を重ねていくとともに落ちていくのが普通だ。しかし中村は体力の衰えを感じさせない。

Jリーグが発表しているトラッキングデータによると、第2節ホームのベガルタ仙台戦(3月4日)で、走行距離12.90kmを記録している。ここまでリーグ戦23試合を終えて、リーグ全体で19番目の成績である。

無論、単に距離を走ればいいということではない。プレーに関係ない部分も距離に含まれるため、一概に走行距離だけで評価できないとはいえ、中村の走りが効果的であることは試合を見ていれば分かる。

現在のポジションは「3-4-2-1」の2シャドーの一角。試合終盤に差し掛かってもサボらない。時にはサイドバックの位置まで下がり、スライディングでピンチの芽を摘むなど献身的な働きで守備陣を助けている。

 

「楽をすれば、衰えがくる」

走りへのこだわり――。中村の論は、興味深い。

「(昨年までプレーした)マリノスのときは前にいようが後ろにいようが守備に走ったり、攻撃でも自分が動くことで連係の潤滑油になろうとした。そうすることで『衰え』というものは感じたくなかった。それはここでも同じで、ポジション的には無理に動かなくていいところでも、自分でやれることを探していきたいと思ってきた」

自分では無理に動かず、周りに指示して動かせばいい。だが彼の場合は、手を抜かずに自分で率先して「無理をする」。ベテランの彼が真っ先に無理をすることで、周りもやらざる得ない状況をつくる。それが潤滑油となって、攻守の連係がスムーズになるというスタンスである。

中村にとって「無理をする」の対義語は、「楽をする」。後者に向かえば、「衰えがくる」と考える。だからこそ敢えて「無理をする」ことに意義を感じている。

しかしながら、何も考えずに走ればいいというわけではない。イビチャ・オシム元日本代表監督の教えではないが、考えて走るサッカーを彼なりに体現している。

7月29日、5-2で圧勝した第19節アウェーの川崎フロンターレ戦は、まさに中村の効果的な走りが際立っていた。

左コーナーキックから櫻内渚へのアシストなど攻撃面で結果を残す一方、守備では相手左サイドバックの車屋紳太郎をケアしつつ、両ボランチに睨みを利かせた。プレッシャーをかけるところと、止まって睨みを利かせるところ。その判断が実に冴えていた。

「行くところと行かないところ(のメリハリ)。相手にわざとボールを持たせて、中を締める。(中に出すところが)ないなと思ったら外に出すしかなくなる。その時間でウチのほうも、もう一度(陣形を)整えることができる。ただ、もし相手に2点、先に取られていたら、もっと前に出ていかなきゃいけない。(守備を)どうチョイスしていくか。引き出しはいっぱいあったほうがいいから」

ゲームを読む目と効果的な走り。それでも両チームでトップとなる11.223kmを走っている。走りの質も、量も、こだわっていることの何よりの証左だ。