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「企業年金担当者」は、こうして金融機関にカモられる

やっていいこと、悪いこと

「年金運用リスク」は非合理的?

日本経済新聞の集計によると、企業の年金債務が8年ぶりに減少したという。確かに、NTT、日立製作所、パナソニックなどの大手企業では、1000億円を超える年金債務の減少額がある。

これ自体は経営環境的に概ね結構なことだが、この数字は、変化が逆方向に、つまり「今年のような環境から、去年のような環境に」変化した場合、同様の額で年金債務が拡大しかねないことを意味している。

加入者に将来の年金給付額を約束する形の、従来からある「確定給付型」の企業年金のリスクは、多くの企業にとって、まだ十分に小さいと安心できるものではない。

例えば、先の3社は、いずれも債務残高が2兆円を超える年金債務(同時に年金資産もあるはずだ)を抱えているが、どの会社の本業も資産運用ではない。運用が決して本業ではない会社の収益が、主に資本市場の環境変化による年金運用の成否に大きく左右されることは、経営的に考えて合理的とは言い難い。

日本の企業年金は、1990年代から2000年代初頭にかけて、主に厚生年金基金の形で、(1)金利低下による年金債務の拡大、(2)株価下落などバブル崩壊に伴う運用不振、(3)厚生年金の代行部分(国の年金に代わってリスクを取って運用していた部分)の運用リスク拡大効果によって、端的に言って「酷い目に遭った」。

この反省から、多くの企業が、代行部分を国に返す(いわゆる「代行返上」)、確定給付年金を縮小ないし廃止して確定拠出年金に移行する、確定給付の企業年金の制度を変えて運用リスクを縮小する、などの対応を取って来た。

かなり成果は出ていると言えるが、まだ道半ばという所だろう。

 

企業年金制度の意味

そもそも、企業が社員のために独自の年金制度を持つことの意味は何だろうか。

最大の意味は、「企業年金(や退職金制度)を通して社員に報酬を払うと、税金上のメリットが得られて、そうでない場合よりも、人件費を実質的に有効に使える」ところにあると考えるべきだろう。

(図)企業にとっての年金制度・マネー教育の意味

企業年金には、掛け金の所得控除、運用中の運用利益の非課税、受け取りの際の税制優遇、所得が下がっているはずの年金受け取り時に課税所得を移転することの節税効果など、各種の節税効果があり、これは、企業と社員双方にとってメリットになっているはずだ。

「双方にとって」というのは、例えば、節税のメリット分だけ企業にとっては「社員にとって同じ実質価値の報酬を与えるために、企業が払う人件費を節約できた」ということだし、社員からすると「企業が払える同じ人件費から、より多くの実質価値を受け取ることが出来た」ということになるからだ。

企業は、自社の年金制度、さらに社員が個々に社外で利用する年金制度を、人件費をより有効に活用する手段として理解すべきだ。この事情は、図の上半分を見て頂くとお分かり頂けるだろう。