ドラギECB総裁とイエレンFRB議長〔PHOTO〕gettyimages
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「景気加速・インフレ率減速」下での金融政策はどうあるべきか?

経済研究の最前線から最新報告
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金融市場関係者が注目する米カンザスシティ連銀主催の「ジャクソンホール・ミーティング」が8月24日から始まる。8月26日までの3日間の開催である。

このジャクソンホール・ミーティングの本来の趣旨は、金融政策とマクロ経済に関する最先端の研究成果を世界水準の経済学者が発表し、その成果について経済学者と政策当局者が議論をたたかわせる場を提供することである。

昨年は、プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が、「財政の物価理論」についてのスピーチを行い、これが浜田宏一内閣府参与によって「シムズ理論」として日本に紹介され、話題になったことは記憶に新しい。

 

だが、いまやマーケット関係者にとって、違う意味で極めて重要な注目イベントとなっている。その発端は、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)前議長が、この会合の冒頭の挨拶で量的緩和の段階的縮小(いわゆる「テーパリング」)の計画を発表したことであった。

それ以降、ジャクソンホール・ミーティングは、中央銀行幹部が近い将来の金融政策スタンスについての見通しを発表する場になるのではないかと、毎年の夏の注目のイベントとなっている。

2016年の「ジャクソンホール・ミーティング」にて〔PHOTO〕gettyimages

「量的緩和の縮小」は始まるのか

今年の注目は、イエレンFRB議長によるFRBの資産圧縮プログラムに関する講演に加え、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁がECBの量的緩和縮小(「テーパリング」)のプランを発表するか否かである。

FRBやECBなど先進国の中央銀行が直面する課題は、本来目標としてきたインフレ率が目標値まで上がりきらない中での、政策変更の是非である。FRBもECBも事実上の「2%のインフレ目標」を掲げており、本来ならインフレ率が2%近くに到達し、その水準で安定的に推移していることを確認してから、政策転換を行うべきところである。

現状、米国のインフレ率は、食品やエネルギーを除くコアで、1%台半ばで推移している。しかも、今年の1-3月期をピークに減速感が強まりつつある。FRBの公式見解は、インフレ率の減速は一時的で、すぐに上昇するというものであり、むしろ、過去の量的緩和に積みあがったマネタリーベースが、一気にマーケットに流れ出すことによる「バブル」を懸念しており、それが、ここまでの段階的な利上げの根拠になってきた。

政策金利であるFFレートは、1%近傍まで上昇してきているが、今後、FRBが最終目標(いわゆる「the Long-run Goal」)である3%までFFレートを引き上げるためには、リーマンショック後に累増した超過準備をなるべくリーマンショック前の状態まで縮小させる必要があると考えているのであろう。

今後、スムーズに利上げを進めていくためには、超過準備をある程度削減させる必要があるため、FRBの「金融正常化政策」が、FRB自身の資産圧縮という新たな段階に入る必要が生じてくるのは、ある意味当然のことである。

さらにいえば、米国の実体経済はそろそろピークアウトに近いとの見方が強い状況ながら、なかなか減速しない。むしろ、GDP統計上では、4-6月期の実質GDP成長率が、季節調整済前期比年率換算で+2.6%と加速した。FRBによる資産圧縮は正当化されつつあるようにみえる。

だが、最近になって数名のFRB高官が、先行きのインフレ率について、やや悲観的な見方をとるようになっている。実際に、マーケットの予想インフレ率(「ブレークイーブン・インフレ率」)も1.6~1.7%近傍で、むしろ低下気味で推移している(ちなみにリーマンショック前の平均は2.3%程度であった)。

現在のマーケットのコンセンサスでは、9月にFRBの資産圧縮計画のスケジュールが発表され(事実上の圧縮開始)、12月には利上げが実施される公算が強いとされている。

だが、インフレ率の減速が今後の米国経済の減速を見越したものであるとすると、FRBの金融政策正常化のプロセスが途中で頓挫する新たなリスクも考慮する必要が出てくるため、金融政策見通しを不透明なものにしている。

 
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