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増加する「息子介護」~妻が何とかしてくれると思っていたら…

まさか自分が介護とは…という男の本音
平山 亮 プロフィール

「結局は妻が何とかしてくれる」は変わらない

では、息子介護者が増えたのは、男性の意識の変化によるものなのだろうか。

かつては妻に「任せる」のが「ふつう」だった親の介護を、既婚の男性も自分でするようになったのだとしたら、これは「自分の親は自分で看る」という意識が男性に浸透した結果なのでは、と思う人もいるかもしれない。

だが、データが示すのは、「必ずしもそうともいえない」という事実だ。

社会学者の中西泰子氏は『若者の介護意識:親子関係とジェンダー不均衡』(勁草書房)のなかで、男性は妻に「手伝って」もらうことを前提に親の介護を考えているのでは、と指摘している。

というのも、統計解析の結果、妻に専業主婦であることを期待する男性ほど、「親の介護をするつもりがある」と答える確率が高くなる、ということがわかったからだ。

中西氏の指摘は、私自身の調査の結果とも符合する。

私は2010年から息子介護者のインタビュー調査を続けているが、独身の息子介護者が「まさか自分が介護することになるなんて思わなかった」と漏らすのを聞くのは、めずらしくない。彼らには、既婚の男きょうだいがいる。だから、親の世話は「嫁」がいる兄弟のところに回るものだと思っていた、と彼らは口を揃える。

ちなみに、中西氏のデータは20代が中心、わたしの調査は40代・50代が中心である。対象者の世代の違いにもかかわらず、「結局は妻が何とかしてくれるはず」という男たちの暗黙の期待にそれほど違いはない。だとすれば、親の介護に関する男性の意識がそれほど変わったと言えるのかどうか……疑問である。

 

親が倒れて初めてわかる「誤算」

「結局は妻が何とかしてくれるはず」という期待があるからこそ、自分ひとりで親を看ることになった既婚の息子介護者から、「正直、こうなるとは思ってもみなかった」という本音を聞くことは少なくない。

もちろん彼らは、親の介護の何もかもを、妻にやってもらうつもりでいたわけでは必ずしもない。だが、それでも妻は何かしら「関わって」くれるだろう、と心のどこかで思っていたのである。

この期待は、自分たち夫婦と親の距離が近いほど、強くなる。

親の住まいが近所にあるほど、妻が「関わって」くれることに疑いをもたなくなっていくし、まして同じ建物、同じ敷地に住んでいるのであれば、自分の親を看ることに妻は同意している、と確信してしまう。

だからこそ、「見当違い」で自分で何もかもすることになった息子のなかには、釈然としないものを抱えたまま介護を続けている者も少なくない。

付け加えておくと、彼らのほとんど全員が、事前に妻の意向を確認したり、親の介護について話し合ったりしたことがなかったそうだ。

つまり、彼らは妻本人に尋ねることも頼むこともないまま、妻はきっと何かしら「関わって」くれる、とどこかで思い続けてきたのである。

自分の思惑と妻の意向はズレていたのだ、という事実に彼らが直面したのは、親が実際に介護を要するようになってからだった。

(後編はこちら「男たちの『夫婦観・家族観』はなぜこんなにも変わらないのか」)