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発達障害の息子と「共依存」し、ストレスで自分の髪を抜く母親の告白

育てられない母親たち【3】
石井 光太 プロフィール

気づけば夫も父親そっくりのDV男に

こんな生活が幕を閉じるのは、小学校6年の時だった。景子は衣服をくれる親戚のおばさんと会った際に、家で父親から暴力を受けていることを話した。おばさんはすぐにこう言った。

「それは虐待よ。すぐに市役所に行って相談しなさい」

暴力まみれの生活に嫌気がさしていたことから、景子は自らバスを乗り継いで市役所へ行き、家庭内での事情を話した。その場で児童相談所の職員が呼ばれ、景子は一時保護された。

本心では母親のもとで暮らしたかった。だが、母親は知的障害のある妹の面倒をみるのに精いっぱいで景子を引き取る余裕はなかった。それで景子は児童養護施設で暮らすことになった。

 

施設では、人間関係をうまく築けなかった。虐待の影響で心がズタズタに引き裂かれ、荒んでいたのだろう、誰も信頼できず、試し行動ばかりとってしまう。些細なことで職員や同じ子供たちと口論になり、殴りかかることもあった。

高校3年の終わり、景子は6年間暮らした施設を離れることになる。施設職員を殴って怪我をさせてしまい、追い出されるような形で親戚の家に預けられることになったのだ。だが、その家はワンルームしかなく、プライバシーがまるでなかった。景子は耐えきれずに1ヵ月で家出。当時付き合っていた大学生のアパートに転がり込んだ。

卒業後、彼氏の家で暮らしながらパチンコ店に勤めはじめるが、間もなく妊娠。彼氏からは「学生だし金もないから堕して」と言われた。中絶手術をきっかけに、彼女の心の病が顕著になった。うつ病、極度の不振、パニック障害……。これまで保っていた心の均等が崩れてしまったのだ。

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景子はパチンコ店を辞めてパートを転々としたが、精神の不安定さから、頻繁に彼氏とぶつかった。彼氏の方も景子を理解しようとしなかった。そうこうするうちに、景子は20歳で2度目の妊娠をする。最初の中絶の苦い記憶があったため、結婚して産むことにした。生まれたのは男の子だった。

2人は埼玉県に仕事を求めて引っ越してくるが、正社員の仕事は見つからなかった。夫は非正規雇用の仕事をしていたが、給料の大半を趣味の音楽や飲食費につかってしまう。さらに、それを非難する景子に暴力をふるいだした。

「気がついたら、夫があれほど嫌だった父親そっくりのDV男になっていたんです。苦痛だったのが性行為。彼は性欲だけは盛んで、毎晩のように求めてきて、私が断ると激怒して、全裸にして何時間も正座させて説教をしました」