食い荒らされた作物(Photo by gettyimages)
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海外でヒアリ並みに恐れられている「ジャパニーズ・ビートル」の猛威

外来生物との熾烈な戦いの歴史

ヒアリが日本各地で続々と見つかっています。

一時のような報道の過熱は収まったようですが、6月に兵庫県尼崎市で国内初の個体が確認されてから、愛知、大阪、東京、福岡、新潟、岡山などの主に港湾でも見つかったほか、8月に入ると埼玉県や岐阜県などの内陸部でも発見されました。本格的な侵入と定着が始まっているとみてよいでしょう。

ヒアリはもともと南米原産の昆虫ですが、現在では北米や中国大陸にも生息しています。日本に侵入しているヒアリは、中国から運ばれてくるコンテナに乗って、海を渡ってきたと考えられています。そのため、ネット上の一部では「中国からの侵略者だ」とか、果ては「中国政府の陰謀なのでは」とまで噂されているようです。

 

しかし、ブラックバスなどの例を持ち出すまでもなく、生物がもといた地域から他の地域へと海を渡って進出し、現地で猛威を振るうことはそう珍しくありません。しかも、外来生物が日本に侵入してくるケースがあるのと同様に、海外で「日本原産」の生物が大繁殖し、場合によっては多大な被害をもたらしているケースもあるのです。

その実例が、まさにこの夏、欧米の農家を脅かしているマメコガネです。

日本からの小さな「侵略者」

6月には、スイス南部のティチーノ州当局が、スイス国内で初めてマメコガネの生息を確認したと発表しました。また7月下旬になると、アメリカ中西部のミネソタ州でマメコガネが大量発生し、周辺の州でも被害を出していると報じられています(地元メディアのニュース→ https://www.mprnews.org/story/2017/07/28/japanese-beetles-are-particularly-bad-this-year)。

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マメコガネは、日本ではありふれた昆虫です。「コガネムシ」と聞くと、この緑色と赤銅色に輝く小さな虫の姿を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

国内のほぼ全土に分布しているマメコガネは、もとは日本の在来種ですが、20世紀初頭にアメリカのニュージャージー州で発見されるやいなや、急速に北米で勢力を拡大してゆきました。

 

その後、大豆やブドウ、モモといった様々な作物の葉や実を食い荒らして甚大な被害を出すようになり、アメリカでは「ジャパニーズ・ビートル」と呼ばれて今なお恐れられています。成虫による食害だけでなく、幼虫も植物の根を食べるため、タチが悪いのです。

アメリカでのマメコガネによる食害(Photo by gettyimages)

ヨーロッパにおいては、1970年代に大西洋に浮かぶポルトガル領アゾレス諸島で確認された後、2014年にはイタリアなど南欧でも生息が確認されるようになり、アメリカ同様に害虫として忌避されるようになりました。

前述した6月のスイスでの生息確認を受けて、周辺地域では拡大防止の呼びかけが行われるなどの騒ぎが起きています。経済的な面で言えば、マメコガネが世界中でもたらした被害の大きさは、ヒアリの被害と同等以上の規模になるでしょう。