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「ネット右翼」は日本に何万人いるのかを測る、ひとつの試み

彼らの職業、年齢構成は?
古谷 経衡 プロフィール
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「中間階級」がファシズムの担い手になる

政治学者の丸山眞男は戦前の日本型ファシズムを支えた主力を、「中間階級第一類」とした。それはすなわち、中小の自営業者、工場管理者、土地を持つ独立自営農民や学校教員、下級公務員であり、企業でいえば中間管理職や現場監督などの下士官に相当する中産階級である。

これに対して「中間階級第二類」とは、大学教授や言論人などの文化人や、フリージャーナリストなどの知的労働に従事するインテリ階級であり、こちらは日本型ファシズムに対し終始冷淡であった、としている。

現在のネット右翼は、丸山眞男の定義する日本型ファシズムを支えた主力、つまり「中間階級第一類」に驚くほど酷似しているといわなければならない。彼らこそが、政府・大本営の発表を鵜呑みに、翼賛体制の一翼を担って「鬼畜米英」を唱え、一方唱えぬものを「非国民」と呼ばわらしめた社会の主力だったのである。

 

右傾化の主力は「貧困層、社会的底辺層」であるとか、「貧困であるがゆえの鬱憤を差別発言によって発散している」などというのは根拠なき幻想であり、いつの時代でも、常に右傾化を支える主力は社会の中間を形成する中産階級なのである。

そして現代の「中間階級第一類」たるネット右翼は、なまじの中産階級であるがゆえに、可処分所得や可処分時間が多く、インターネットの世界にのめり込んでいく。さらにお気に入りの保守系言論人・文化人に寄生し、彼らの著作や会員制の有料サービスを購入する、という購買力を持つのである。

もしネット右翼が社会的底辺であり、貧しき弱者の存在であるなら、保守系言論人・文化人に「寄生」と「(著書購入等の)見返り」の関係で共依存している関係性を説明することはできない。

彼らの小ブルジョワ的無数の購買力が、彼らに「寄生」される保守系言論人・文化人の生活を支えているのである。

ネット右翼は全国にどれだけいるのか

一時期のような猛烈な勢いは失われつつあるものの、未だにネット上に跋扈(ばっこ)し、またそれがゆえにネット世論の右傾化をリードしているようにも思えるネット右翼の全国的趨勢は、いかばかりなのだろうか。つまりネット右翼は全国に何人くらい、何万人ぐらいいるのだろうか。これは、彼らを語るうえで避けて通ることのできぬ前提事項である。

ネット右翼の実数は、近年まで謎のベールに包まれていた。日頃ネット右翼が極めて右派的、保守的な思想傾向を「宿主」である保守系言論人・文化人に寄生することで開陳しているのは、すでに第1回の記事で述べたとおりであるが、彼らの実数をうかがい知ることは困難であった。

なぜなら最も有力な指標となる国政選挙において、ネット右翼の投票行動のほとんどは自民党票に吸収されてしまい、全国的概数を知ることができなかったからだ。

これが、「日本の左派(左派寄りの無党派層を除く)の実数はどの程度か」という質問ならわかりやすい。彼らの思想傾向を代弁する国政政党、日本共産党と社会民主党の全国比例区での総得票数が、おおむねだがその答えを教えてくれる。投票率にもよるが、おおよそ前者は400~600万人、後者は100~150万人である。

ある種の宗教団体がバックとなって設立された政党の比例代表の総得票数をもって、その教団の信徒数の概数を推察できるのと同様、ネット右翼のそれも、本来であれば彼らの思想傾向を代弁する国政政党の比例代表総得票数を以ってその実数を推し量ることができるはずだ。

しかし、前述の理由によりネット右翼の思想傾向を代弁する全国政党は存在せず、長年の間そのほとんどが自民党への投票に紛れてしまっていたため、分別は困難であった。

このような状況が一変したのが、2014年11月の衆議院総選挙である。

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