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追い詰められた地域銀行がすがりつく「与信費用」という禁断の果実

「背に腹は代えられない」でいいのか

昨年7月の東京ドーム。赤いシンボルカラーの大応援団が、対戦相手の応援団を圧倒していた。念願の都市対抗野球に初出場を果たした地域銀行Xである。相手方は出場50数回の古豪で、多くのプロ野球選手を輩出している老舗電機メーカー。手に汗握る接戦の結果、延長戦を制したのはX銀行だった。

10年前、X銀行は存続が危ぶまれるぐらいの断末魔の状況にあった。現在は野球のみならず、本業のほうでも顧客の強い支持を得て好調だ。この銀行が“地獄の一丁目”から不死鳥のごとく蘇るきっかけとなったのは、実は「公的資金」だった。

 

いまの「公的資金」は90年代とは別モノ

筆者は2010年から、地域金融機関が公的資金を資本として導入する際の経営計画の審査(金融機能強化審査会)をしている。国民の税金が「活きたカネ」として使われるかどうかをチェックする、非常に神経を使う仕事だ。

誤解されている方も多いのだが、いまの金融機能強化法(2004年に成立)に基づく「公的資金」は、かつての早期健全化法(1998年)のそれとはまったく異なる。

早期健全化法の公的資金は、不良債権により財務内容が悪化した金融機関に起因する、信用不安(緊急事態)を解決することが目的だった。

それに対し、金融機能強化法による公的資金は、(平時において)資本が不十分なため、地域での円滑な金融仲介に苦慮している特定銀行の支援が狙いだ。より具体的に言えば、資本不足のために業況の厳しい企業に資金を提供したり、事業再生を支援したりできない地域金融機関を後方支援するための資金である。

全国105の地域銀行のうち、現在までに16行(うち3行は完済)が金融機能強化法による公的資金を取り入れている。信用金庫、信用組合も含めると、この数はさらに増える。導入した金融機関の中には、公的資金の意味を正しく理解していないケースもないわけではないが、多くの金融機関が公的資金の力を借りて地域再生・地域振興に努めていることは間違いない。

公的資金で資本に厚みができれば、厳しい中小・零細企業に対しても、躊躇することなくしっかりと融資を行い、腰を据えて事業再生に取り組み、さらには本業支援との合わせ技で顧客の事業価値を向上させることができる。

こういう姿勢の銀行は間違いなく「逃げない銀行」である。公的資金は、地域事業者、地域経済の苦境から「逃げない銀行」を応援するためにある。