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人手不足の「業種格差」を放置すれば、日本経済ははてしなく停滞する

既存産業の「創造的破壊」が必要だ

「団塊世代の引退が人手不足の原因」はウソ

人手不足を訴える業界や企業が増えている。日本経済の問題は、リーマンショック不況の2009年から8年経った今、失業から人手不足へと、完全にシフトしたと言えるだろう。

成長戦略(経済成長のための規制改革)による労働生産性の向上が実現するかどうかが、いよいよ問われる局面になったのだ。イノベーションと労働需給のミスマッチの観点から、現状の問題を考えてみよう。

失業率2.8%(6月)という水準は1990年代初頭まで遡る低さである。有効求人倍率1.51倍は90年前後のバブル期のピークにもなかった高さだ。

一部の論者は、こうした雇用情勢の改善は「見かけ」に過ぎず、2013年前後に団塊の世代が65歳となり、引退年齢に入ったこと、つまり労働力の減少による結果に過ぎないと景気の回復を否定する言説を流している。

 

しかし、筆者が5月に当サイトに寄稿した「日本経済を食い尽くす、医療・福祉への『雇用一極集中』」でも示したが、雇用者数は2012年10-12月期から17年4-6月期にかけて240万人増えており、現在の人手不足が雇用増加を伴ったものであることは明確だ。また、正規雇用も2015年以降は非正規雇用の増加を上回って増えている。

すっかり構造が変わった労働市場

1980年代以降の雇用動向をレビューしてみよう。図1は、横軸が失業率、縦軸は日銀短観による企業の「雇用人員判断DI」である。雇用人員判断DIとは、企業アンケートで人員が余剰と答えた企業の比率から人員不足と答えた企業の比率(%)を引いたものであり、プラスだと人員余剰、マイナスだと不足の企業が多いことを示す。

図1

景気回復期には失業率が低下し、人員不足の企業が増え、景気後退期にはその逆に動く。したがって、2つのデータには正の相関関係があり、図上右肩上がりに分布する。しかし分布の傾きと位置が色分けした3つの時期で大きく異なることにご注目いただきたい。

1983-94年の期間(図の青線)は、失業率の変動がほとんど2~3%という狭い範囲に収まっていた一方で、人員の過不足の変動の幅は大きい。その後、銀行不良債権危機とアジア通貨危機で戦後最大の不況となった98年を中心とする95-99年の期間(図の赤線)には、分布は大きく右にシフトした。

これは、企業部門がそれまで不況期でも抱えていた余剰人員を抱えきれなくなってリストラに動き、また新卒の採用を厳しく抑えた結果である。右に分布がシフトするほど、同じ水準の人員過不足でも失業率は高くなるので、労働需給のミスマッチが拡大していると理解できる。

2000年以降(図の緑線)の期間では、再び分布は右肩上がりの安定的な傾向を取り戻し、現状は失業率が低く、人員不足が大きい最も左下に位置している。しかし94年までの青の期間に比べると、分布の近似線の傾きは小さい。これは失業率の変化の幅が拡大し、企業内の人員過不足の幅は相対的に小さくなっていることを示している。

つまり90年代後半を境に、企業は正規雇用を抑制し、パート労働などの非正規雇用を増やすことで、景気循環に伴う人員の過不足を主に非正規雇用の増減で調整するようになったのだ。