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学校・教育 週刊現代

「帰宅部は堂々と帰宅すればいい」ことを教えてくれる一冊

部活動の「おかしさ」を考えよう

授業よりも部活のほうが上

旧知の中学校教師に日頃の労働時間を聞いたら「8時から21時が基本」と苦笑いされたが、(言葉として矛盾するが)頻繁に例外があり、更なる長時間労働をこなす日々だという。

学校の上長はもちろん、生徒の親からも査定され続ける教師が、慌ただしい労働環境の中で一定の評価を得るために取り組むのが部活動の顧問。その顧問が何よりの長時間労働の温床になっていると、いくつものデータから立証するのが内田良『ブラック部活動』。

そもそも部活動は学習指導要領の制度上では「自主的な活動」であり、多くの学校で生徒の部活動加入が強制されている実情こそおかしい。なぜって、「自主」が「強制」されているのだから。「帰宅部」という言葉は長年、揶揄や自嘲の言葉として使われてきたが、そもそも生徒は自主的に帰宅する権利を有している。自信満々に家に帰っていいのだ。

とりわけ若い教師にとって、部活動の顧問として成果を上げることは学校内外からの分かりやすい評価に繋がる。誰しも見覚えがあるだろうが、校舎にかけられた「祝 全国大会出場 ○○部」との垂れ幕は、どのように授業に取り組んだかよりも、教師の評価として優先される。

 

周到な準備で授業内容を充実させるよりも、給与の払われない「サービス残業」でしかない部活動に心血を注いでしまう。「四時間以上の指導でやっと三千円程度(交通費や弁当代等含む)の手当」しかもらえない土日の練習や試合にも付き添い、休日など皆無。

教員採用試験の志願書の一例が掲載されているが、そこには「指導できる部活動名」とあり、何がしかの部活を教えられる人材かどうかが採用基準に組み込まれる。

学習指導要領外にもかかわらず、明らかに判断材料なのだ。巻末の座談会に参加した、早くからブログで部活動の顧問制度への疑問を投げかけていた中学校教師・真由子氏の発言、「教師の本分はなにかというと、授業なんです。極端なことを言うと、授業さえちゃんとできれば全部ついてきます」という真っ当な訴えに、現場の異様を知る。

これまで柔道事故や組体操事故など、教育現場の「強者」が作り上げる闇雲な精神論に起因する事故を問題視してきた著者が、学校全体に染み渡る風土を根底からひっくり返そうと試みた野心的な一冊。