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音楽

阿久悠の偉業〜歌が「時代を超える」意外な条件とは?

懐メロ化する歌とはココが違う

今年は、作詞家・作家の阿久悠(1937-2007)の生誕80年、没後10年。

雑誌やテレビが特集を組んでいる。そのいくつかを読んだり見たりして、思うところを綴ってみる。

私はこれまで、『山口百恵』『松田聖子と中森明菜』(いずれも朝日文庫)『SMAPと平成』(朝日新書)と、日本の歌謡曲・J-POPを題材に3冊の本を書いてきた。

この3冊の本に共通するのは、主人公が阿久悠の曲を歌っていないことだ。

『山口百恵』では、物語の構造上の必要から、阿久悠を「敵役」として描いたが、私自身は阿久悠の作品が好きだし、この偉大な作詞家に敬意を抱いている。

時代と密着した歌

阿久悠が作った曲は「約5000曲」と言われている。

しかし本人へのインタビューなどを読むと、自分では作品数を把握していないようだ。

JASRACの「作品検索データベース」で「阿久悠」を検索してみると、3135となった。流布している「約5000曲」とは2000曲も差がある。

 

阿久悠はいろいろな仕事をしていたから、レコードになっていない、コマーシャルソングや、テレビ番組内でのみ歌われた曲、あるいは雑誌や新聞などに書いた曲が、2000近くあるということなのだろうか。

3135曲のなかにはシングル盤ではなくアルバムのみの曲や、シングルB面の曲も含まれるので、A面の曲だけだと1000前後と思われる。

いずれにしろ、歌謡界で阿久悠の作品がいかに求められていたかが、この数字だけで分かる。

阿久悠が存命中の1997年に、14枚組のCDセット『阿久悠大全集 移りゆく時代 唇に詩』が発売された。これにはヒット曲を中心に、阿久悠自身が選んだ261曲が、曲の発売順に収録されている。

「阿久悠の歌は時代と密着していた」と、このCDセットの編成そのものが主張している。

阿久悠と同世代の、なかにし礼(1938~)の作詞家・作詞生活50周年記年CDセット『なかにし礼と75人の名歌手たち』でも、85曲が発売順に配列されている。

この、ともに昭和の戦後を生きた二人の作詞家の作品は、それが発売された時代を抜きにしては語られないし、聴けば、その時代を思い出す――そういう構造にある。

二人は、「歌は世につれ世は歌につれ」という思想を信じている。