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バノンがトランプ一家とどれだけ「険悪」であったか、教えましょう

~米メディアはこんな風に報じていた

解任までの長い迷走

8月18日、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は記者会見の席で短い声明を発表した。声明は「ジョン・ケリー首席補佐官とスティーブ・バノンは、今日がバノンの(ホワイトハウスでの)最後の日になることで合意した。我々は彼の貢献に感謝している」と、味気ないほど簡単な文面であった。

バノンはトランプ政権誕生の立役者であり、政権発足直後にホワイトハウスの首席戦略官に任命され、その影響力を誇示していた。彼は白人至上主義を主張するオルトライトの指導的な人物で、孤立主義を主張し、トランプ政権の政策をリードしてきた。

 

トランプ政権のイスラム国からの入国規制やパリ条約からの離脱といった政策は、バノンを中心とするホワイトハウス内のオルトライト・グループが主導して推進された。

だが3月頃から、トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー補佐官などの国際派との対立が表面化し、幾度も辞任の噂が流れた。また、共和党や経済界から辞任を求める声もでていた。保守派のフォックス・ニュースのルパート・マードック会長もトランプ大統領にバノン解任を進言していた。

トランプ大統領はホワイトハウスの再構築を進めてきた。ショーン・スパイサー報道官やプリーバス首席補佐官の解任、退役海兵隊大将のケリー国土安全保障長官を首席補佐官に任命する人事を行った。またアンソニー・スカラムッチ報道部長も就任わずか10日で解任している。

ちなみにプリーバス首席補佐官は共和党全国委員会委員長、スパイサー報道官は共和党全国委員会広報部長の職にあり、共和党との間にパイプを持つ人物である。トランプ大統領はブリーバス首席補佐官の解任を決定した時から、バノンの解任も考え始めていた。

何と何が対立したのか

バノン解任では、ケリー新首席補佐官が主導的な役割を果たした。トランプ大統領はケリー首席補佐官に、ホワイトハウスの組織の立て直しと、バノンの役割に関する評価を命じた。

トランプ大統領は度重なる情報リークに苦々しい思いをしていたが、プリーバスやバノンが情報リーク源ではないかと疑い始めていた。それもバノン解任の動機になったのかもしれない。

スティーブ・バノン解任されたスティーブ・バノン主席戦略官 photo by gettyimages

問題は、「いつ」「どのような形」でバノンを辞任させるか、であったと伝えられている。トランプ大統領は、政権誕生の貢献者であるバノンの体面を保つために、辞任の選択肢を与えたと言われている。ただ、バノンに近い筋は、辞任はあくまでバノン自身の意志によるものであると、解任説を否定している。

バノンが辞表を提出したのは8月7日である。辞表では14日付で辞任するとなっていたが、12日、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義グループのデモに抗議する反対派の集団に自動車が突入して死者が出る事件が発生し、辞任発表は先送りとなった。

そんな中、15日にバノンはトランプ大統領が行った極右白人至上主義者の行動を容認する発言を「決定的な瞬間」と賞賛している。トランプ大統領がそうした発言をしたのは、バノンの影響があるとみられる。

辞任発表が18日になったのは、2016年8月17日にバノンがトランプ候補の選挙責任者に就任しており、18日はそれから1周年に当たるからであるとの見方もある。

保守派のウェブサイト『ニュースマックス』は、バノン解任の6つの理由を指摘している。

(1)北朝鮮政策でトランプ大統領と対立したこと(2)シャーロッツビルの衝突の後、オルトライトに対する締め付けが厳しくなったこと(3)バノンが中国との貿易戦争を主張したこと(4)ホワイトハウス内での対立、具体的にはコーン国家経済委員会委員長とスーザン・トロントン国務省東アジア太平洋局長を攻撃したこと(5)クシュナー特別顧問らトランプ一家との関係が悪化したこと(6)共和党内部からバノン批判が強まったこと、である。

バノンは18日には古巣のブライトバート・ニュースに復帰し、同日開かれた編集会議を主催した。同社のラリー・ソルブ最高経営責任者は「ポピュリスト・ナショナリスト運動は現在、さらに強くなっている。バノンが復帰したことで、わが社の国際的な拡大は加速するだろう。空は無限である」と、バノンの復帰を歓迎している。