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現役世代を使い潰す日本の介護制度は、もはや完全に失敗している

だが、誰も「おかしい」と言えない

金持ち以外、もう介護は受けられない

前編で説明した通り、人手不足からの負の連鎖で、介護施設の質の低下は底が抜けた。

国が高齢者を民間に捨てた介護保険制度が始まって以降、業界に市場原理が持ち込まれ、介護ベンチャーの経営者たちはこぞって高齢者の生活の質の向上ばかりを煽った。その結果、膨大な介護職たちが低賃金と重労働で使い捨てにされ、人材の質が凋落、もはや介護現場は崩壊し、現在進行形で高齢者殺害の事件や死亡事故が頻発している。

そんな深刻な状況下で介護保険の制度縮小は刻々と進み、現在ではそのターゲットが介護職から高齢者へと移っている。まず手始めに介護度の軽いとされる歩ける認知症高齢者が切り離された。2015年、特別養護老人ホームの入居基準がこれまでの要介護1から介護度3以上に改正され、さらに2016年からは要支援高齢者を切り捨てるという議論が進んでいる。最終的には要介護2までのすべての軽度高齢者を切り離し、介護度が重度とされる、寝たきりの高齢者だけを「介護」とすることが最終目標と言われている。

要介護1、要介護2の認知症高齢者を制度から切り離せば、街は徘徊老人だらけになる。その結果、なにが起こるかは考えるだけでもおそろしい。

 

さらにそれだけでなく、今後の要介護高齢者は経済的にも厳しい現実が待っている。高齢者の自己負担割合が従来の1割から2割と倍増、2018年8月には、さらに2割から3割への負担を強いられることが決まっているのだ。

これから要介護高齢者は経済的に絞めつけられる。2015年4月の改正で一定所得がある高齢者の自己負担割合が1割から2割に倍増し、来年8月にはさらに2割から3割への値上げとなる。高齢者の自己負担の急激なアップによって、金持ち以外は介護サービスが受けられない。その結果、介護離職、老老介護は、さらに深刻な事態となる。もう、日本の超高齢社会には希望がみえないのだ。

デイサービス大手・株式会社日本介護福祉グループの創業者であり、介護業界の風雲児と呼ばれた藤田英明氏は「(介護は)本当の崩壊に向かっている」と深い溜息をつく。

生活も人生も潰して、尽くせと言うのか

中村 介護の人材確保は事業者を超えて、最近は都道府県や自治体でも盛んに行われている。

介護サービスを利用する高齢者とその家族、介護職を支援し、介護に関わる人たちと地域社会の交流を深める名目で「いい日、いい日」とかけた11月11日を「介護の日」と制定し、11月4日~17日までを「福祉人材確保重点実施期間」として介護職普及のためのイベントを開催。”やりがい発見”や”好きを仕事に”といった、キラキラ系のポエムで税金を使って煽っているね。

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さらに厚労省が就職活動をする高校生などをターゲットに、事業所でボランティア活動をさせたり、小中学校と連携して介護の「体験型学習」を盛り込んで啓発したり。問題まみれの今の介護現場に、子供を誘導するとかありえないでしょう。子供の人生まで潰そうとしている。本当にやめて欲しい。

藤田 でも僕の実感としては、そういった人材確保イベントに学生がほとんど来ていない。学生や親、進路指導の先生は今の介護職に将来性のないことをちゃんとわかっているのが救いです。この現状を見たら、やっぱり若者は他業種に行くべきです。

でもそうなると、危機的な状況に陥る介護はどうなるのか。担い手がいないということは、乱暴な言い方をすれば高齢者を社会の枠組みから切り捨てるということ。そこで僕が思ったのは、もう介護職は地方公務員にするのがいいのではないかと。

中村 つまり介護保険制度の解体ですか。高齢者を民間から引き揚げて、全員を措置時代のように都道府県と自治体に戻してしまうと。数年前までベンチャー企業の経営者として新自由主義を掲げて、介護はすべて民間、社会福祉法人を潰せとまで言っていた人の発言とは思えない(笑)。

藤田 人材不足、質の劣化に加えて介護報酬もさらに減らされる。近年では介護事業所の指定取消処分が過去最多というニュースもある。それほど危機的な状況です。

でも介護という社会保障を崩壊させるわけにはいかない。もともと、措置制度が廃止されたのは、国と自治体が社会福祉サービスを提供することが財政的に困難になったこと、介護度の実情や希望に沿ったサービスができず画一的な介護しか提供できなかったことなどが要因でした。

だからこれからは、介護職を地方公務員が担い、事業者は民間で運営するという官民共同の新しい形がいいと思う。そうすれば、事業者はサービスに特色をだせるし、地方公務員として介護職の人材も確保できる。事業所運営の方針やコントロールの権利は自治体のやりやすい方法に任せれば成り立つよ。