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「コイツには何言ってもいい系女子」戦略がハラスメントを加速させる

「自虐」が「自滅」を生んでしまう
中野 円佳 プロフィール

なぜそこまでして空気を読んでしまうのか。そこで出てくるのが「空気を害して仕事に影響が出るのを防ぐため」「嫌われないことで、仕事に集中できるように」というロジックだ。以前、Facebookでハラスメントについての認識調査を実施したときにも、次のような声が寄せられている。

 

・自分の職場は完全に男性社会なので、むしろ自分からハラスメントを許容するようなことをしないとやっていけなかったりします。例えば下ネタについていったり、カラオケで積極的に上司とデュエットしたり、お酌したり、などなど。もう慣れました。(30代女性)

・かなりハラスメントに許容度が高い会社で新卒から働いています。主にセクハラに対して許容度が大きい女子になることは自分の居心地の良さにも繋がるため、少し腹が立つことがあっても笑顔で受け流す術が自然と身についてしまいました。(40代女性)

しかし、無駄な労力に女性たちは疲れ、時には、かえって仕事に支障をきたすような精神状態に追い込まれていく。

女性管理職が増えない理由

日本の女性管理職比率は1割にも満たず、先進国の中で非常に低い。2016年の女性活躍推進法施行で、この引き上げを目指す企業も多い。女性管理職が少ない理由を紐解いていくと、採用時点での母数が少ないということに加え、離職率が男性より高い、登用率は男性より低いという2点があげられる。

離職率が高いのは、出産や配偶者の転勤などのライフイベントがあるからだろうと思われがちだが、実はそれらはきっかけにすぎない。大沢真知子氏は著書『女性はなぜ活躍できないのか』等で、日本は仕事への不満やキャリアの行き詰まりを感じて辞めている人の方が、結婚や育児等で辞めている人よりも多いと論じている。

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登用率が低いのはなぜか。ネットワーク、意欲、スキルの3つに要因を整理してみよう。ネットワークについては一番想像がつきやすいかもしれない。マイノリティの場合、マジョリティに比べて師弟関係が得づらく、引き上げてもらったり情報を入手したりする“仲間”に入りづらい。

次に、意欲はどうか。男性中心の社会では、女性は男性に比べて社会的に自分に自信がない傾向にあるということが心理学等の研究で指摘されている(クレア・シップマンら『なぜ女は男のように自信をもてないのか』など)。これに加えて、日本人の女性は長時間労働前提の職場で管理職になりたいと思えないという傾向がある。拙著『「育休世代」のジレンマ』でも触れている内容に近いが、環境的な要件によっていわば意欲を「冷却」させられていると言える。