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大手芸能事務所に支配された「平成テレビドラマ全史」

日本のドラマがつまらなくなった理由②
田崎 健太 プロフィール

世界との格差は開く一方

加えて近年は、テレビ局側が監督、脚本家の作家性を薄くしようとする傾向があるというのは、やはり脚本家の柏原寛司である。

「勝(新太郎)さん、(松田)優作、ショーケン(萩原健一)と、自分はホン(脚本)を変える役者とばかりやってきた。だから書き換えられることは気にしない。ただ、昔は誰々の作品であるという作家性を重要視してくれた。今はその色を消したがっている。

テレビドラマの場合はとくに、作品を監督や脚本家のものにしたくない、テレビ局のものにしたいから、わざと各話で違った監督、脚本家を使う。昔は石原プロダクション、勝プロダクションといった制作会社がドラマの権利を持っていた。

今は、制作会社は単なる下請けで、権利は全てテレビ局が持っている。テレビ局の力がどんどん強くなって、指示通りに従わないと下請けから外される」

 

監督、脚本家の作家性が消され、組織の人間であるテレビ局員たちがコントロールしやすい無難なドラマばかりになる――。

柏原が言う「ドラマの権利」とは、DVD化、再放送などの二次・三次使用権を指す。しかし、世界の市場で売ることを見据えている欧米や韓国などの海外ドラマと異なり、日本のテレビドラマではそれ以上の商業展開が考えられていないことは、前編で触れた通りである。

そんな中、Netflix、Amazonといった企業が制作・配信するインターネットドラマがひとつの光明になりつつある。ただし脚本料で言えば、支払われる報酬は地上波の5〜6割ほどにとどまっているという。さらに権利関係についても、脚本家などの制作関係者に二次使用料が支払われない「買取り」になる作品が少なくない上、外資系企業のため権利交渉の主体もはっきりしないなど、まだ不透明な部分が多い。 

そもそも、地上波テレビに関してはドラマの枠そのものが減っている。制作費が安く、視聴率の「獲れ高」がある程度事前に計算できる、バラエティやお笑い番組が増えているのだ。

日本のテレビドラマは、現在もガラパゴス化と縮小を続けている。

もちろん、制作現場には良質のドラマを送りだそうと歯を食いしばっている人間はいるだろう。また、「プロダクションの後押し」で演技の世界に入ったとしても、その面白さに気がつき、努力を重ねている俳優も存在する。

そして、他国との比較で言えば、アメリカのオーディションシステムも完全に平等ではない。なにより「日本のテレビドラマ」と一括りにすることが荒っぽいことは自覚している。

ただ、本稿で指摘したような状況は、ほとんどの関係者は認識していたはずだ。そして声を上げると仕事や立場を失う、そんな息苦しさがあったことは間違いない。

今後、ドラマとプロダクション、そしてテレビ局の関係について闊達な議論が起きることを期待している。日本でも大人が楽しめる面白いドラマが作れないはずがないのだ。

                       (文中敬称略、この章終わり)