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病気って何?「大人の精神科医」が発達障害の概念を受け入れるまで

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「発達障害」に対する警戒と不信

この数年、「発達障害」という言葉を耳にすることが増えた。

ADHD(Attention Deficit and Hyperactivity Disorder:注意欠如多動性障害)の小児期における有病率が5~10%、成人でも3~5%に達すると聞かされると、その多さに衝撃を受けざるをえない。

この「病気」についての説明が世間ではますます語られるようになっており、単に教育の分野の問題を超えて、ビジネスシーンでの人間関係においても考慮せざるをえない状況が生じつつある。

「本当に、それは病気なのだろうか?」というのは、当然生じる疑問である。

 

そもそも子供は、授業を落ち着いて聞くことができずに、走り回っているのが普通である。苦労して躾(しつけ)を行うから、きちんとした礼儀正しい振る舞いが、社会的な場面でできるようになるのだ。

それをいちいち病気扱いして薬を飲ませようとするのは、悪徳の医者と製薬会社が金儲けをするための陰謀なのではないだろか、そんなことを考える人もいるだろう。

別の人は、こんな風に思うかもしれない。そんなに数が多いのならば、ひょっとしたら自分の身近な人、こちらの言うことを聞かないでミスばっかりしている後輩も「発達障害」に違いない。

組織の批判ばかりしているあの人は、きっと衝動的で多動、そして「空気が読めず」「他の人の心が分からない」からああなるのであって、病気なのだ。

そうやって社会や組織に都合が悪い人のことを、病気であるとレッテルを貼って排除したい勢力が世の中には存在する。その人たちが目指す社会の管理化の進展に、精神医学が共謀しているのに違いがない、といった考えも浮かんでくる。

実は私自身、成人の患者を担当する普通の精神科医として、突然に高まったように感じられた「発達障害」のブームについて、上のように考えて警戒するところがあった。

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そもそも、「小児科」が「内科」から分かれて独立していったように、「児童精神科」が「精神科」から独立しつつある。したがって一般の精神科医にとっても、「発達障害」は近いけれども、少し専門を外れた話と感じられていた。

しかし近年の流行を見ると、そんなことは言っていられなくなってきた。しっかりと勉強をして、きちんとした自分の態度を決定しなければならない。

そんな中で、最初は相当の不信感を持っていたのだが、この数年は「発達障害」の概念を認めた上で、必要とされる治療的な介入をしっかりと行っていくべきであるという風に自分の考えが変わってきた。

今回は、この結論に至る自分の考えの変遷を示すことで、私のように警戒心の強い人でも、「発達障害」の概念についてさらに踏み込んで考える機会になってほしいと考えて小文を執筆している。