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中国で起こった「AIの乱」は、民衆の共産党への不満の表れか

過度な言論閉塞が「ゲリラ」を生んだ?

ネット遮断は「党大会へ向けた社会の安定」のため

「(今年秋の中国共産党)19回党大会に向けたネットの治安強化のため、中小のウェブサイトが違法で有害な情報を流している問題を解決するため、公安省ネット安全局は3日、緊急対処訓練を行う」――ウェブサイトを管理する中国各地のインターネットデータセンター(IDC)などに今月初め、公安(警察)当局から以上のような文面が送られた。

ロイター通信やBBC の報道によると、3時間にわたり行われた訓練はIDCなどに対し、問題とされたウェブサイトを「ただちに(報道では3分以内に)」遮断し、その状況について警察に報告することを求めている。

マイクロソフトの中国のクラウドサービスなど少なくとも4社が訓練に参加、北京では実際に2時間半にわたり多くのサイトが遮断されたという。ロイターの取材に対し、広東省広州市の公安当局は詳細を明らかにしなかったものの、訓練を実施したことを認めた。

ネットではこうした動きに対し、「公安当局の“ボタン1押し”でウェブサイトが遮断される時代になった」「生活の糧にしているウェブサイトがある日突然閉鎖される、そんな時代がやってくるだろう。日々自分の頭上に剣が吊るされているようなものだ。(生存のために)自己検閲もやむを得ないだろう」といった批判や懸念の声が出た。

「党大会に向けた社会の安定」を口実に、習近平政権は次々とネットへの管理を強化している。当局が特に目の敵にしているのが、当局のネット規制「GFW(グレート・ファイアーウォール)」をくぐり抜けて、当局が禁止した海外のサイトにアクセス可能な「翻牆(壁を跳び越えること)」ソフトやサービスだ。

このほど画像がネットで出回った公安省の通達によると、各種の「翻牆」ソフトを削除、アンインストールするよう北京の企業などに要求。そのリストとして、「自由門」、「無界瀏覧」、「Lantern(ランタン)」、「Psiphon(サイフォン)」などのソフトのほか、“違法”なVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)を挙げ、「取り締まりに協力しない、あるいは不徹底な場合は法に従って処罰する」としている。

 

VPNは犯罪

当局はVPNに対し、じわじわと規制を強めてきた。「ボイス・オブ・アメリカ」(7月11日)によると、中国政府は通信業者に対し、2018年2月から個人ユーザーによるVPN利用を禁止すると通知。ブルームバーグは7月10日、消息筋の話として、中国政府は国営3大通信業者の中国移動、中国聯通、中国電信に個人のVPN利用を禁止することを求めた。

そして、米アップルの中国法人は最近、中国国内のVPN回線提供業者やソフト開発者に対し、「中国の法律に従って」彼らの提供するアプリを中国のアップストアでは扱わないと通知した。

フランス国際ラジオ(7月30日)によれば、中国の7億人のネットユーザーのうち、約30%がVPNソフトを使って、国内では封鎖され禁止されている海外の情報にアクセスしていたとされる。

今年初めから工業情報省は「主管部門の許可のない個人や企業」が国際通信業務を扱うことを禁止、実質的に無認可のVPN業者を駆逐することになり、アップルのような企業もVPNソフトの扱いを停止せざるを得なくなった。

アップルは30日、「(当局からの)要求を受け、規則に合わない一部のVPNアプリの取り扱いを停止した。これらのアプリは他国での運営には影響を受けない」とのコメントを発表した。

アップルが扱わなくなった企業のひとつ、エクスプレスVPNはこれに対し、「アップルの決定に失望した。これは中国当局がVPN取り締まりのために行った最も深刻な措置だ。同時にアップルが当局の検閲を手助けしたことを憂慮している」との声明を発表。

別の業者、スターVPNも「これは危険な先例になる。サウジアラビアのように政府が民間のネット利用を完全にコントロールすることになる」と批判した。

今回の問題で、中国の友人は「VPNはいまだに利用可能だ」と語ったが、こう付け加えた。「翻牆は犯罪と考える人は周りにいる。特に政府関係者がそうだ」。当局の狙いは人々にこのような先入観を植え付けるのが目的とも言えそうだ。