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ドイツメディアが仏大統領「マクロン」を褒めちぎりだしたのはなぜか

その自信、まるで皇帝…
川口 マーン 惠美 プロフィール

「強いフランス」を演出

7月14日は、フランスの革命記念日だった。フランスで一番重要な祝日だ。その前日の13日、メルケル首相はパリ入りし、エリゼ宮でマクロン大統領に暖かく迎えられたのち、独仏合同閣僚会議に臨んだ。

会議の後の共同記者会見で発表されたのは、両国が共同で戦闘機の開発に取り組むこと。マクロン大統領はこの計画を「重要な革命」と呼んだ。ちなみに、彼はこれまでの「防衛省」を「軍事省」と改称している。

一方、この同日、トランプ夫妻もパリに入り、その夜は、マクロン夫妻の招待で、エッフェル塔内のレストランで和気藹々と会食が行われた。ドイツメディアはそれを追ったので、メルケル首相や戦闘機共同開発のニュースはきれいに飛んでしまった。

〔PHOTO〕gettyimages

そして翌日、フランス空軍の9機のアルファジェット戦闘機が、パリの空いっぱいにトリコロールの飛行機雲を噴射して、祝祭軍事パレードが始まった。シャンゼリゼの特設舞台の主賓席にはトランプ夫妻とマクロン夫妻が並び、壮大な軍事航空ショーと、延々と続く軍事パレードを見物した。マクロン氏は、大統領というよりも、皇帝になりきっている。彼の演出しているのは、どう見ても「強いフランス」だ。

では、フランス国民はそれをどう思っているのか? ここ数十年、ドイツに首根っこを抑えられた形で欲求不満気味だったフランス人のこと、結構良い気分なのではなかろうか。

フランス人に自意識の欠如はない。問題は脆弱な経済だけだ。

 

かつて自分たちの主導で始めた共通通貨ユーロが、不幸にもフランス経済を打ちのめしてしまった。だからこそマクロン大統領は、ユーロの改革やEU共通債発行など、ドイツの嫌っていることを公約にして、できればドイツのお金でフランス経済を活性化するつもりだ。メルケル首相は9月の総選挙を控えているため、今のところお茶を濁しているが、本格的な協議が始まれば激突する可能性はある。

ドイツ政府は、プーチン・トランプ両大統領と力強く握手を交わしたマクロン大統領の外交手腕にも、少し戸惑っているように見える。それに比べてドイツの外交は、現在、対露も対米もギクシャクしている。

マクロンとはいったい何者なのか? ドイツメディアは仕切り直しをしているのか、マクロン大統領を褒めちぎる報道は、最近、少し下火になっている。