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ドイツメディアが仏大統領「マクロン」を褒めちぎりだしたのはなぜか

その自信、まるで皇帝…
川口 マーン 惠美 プロフィール

なぜこれほど自信があるのか?

その後、マクロン大統領は6月の国民議会選挙で大勝し、あれよあれよと言う間に強力な政権基盤を形成。以来、ドイツではスーパースター扱いだ。彼こそが、メルケル首相と手を携え、ボロボロになったEUの救済を実現する人物。舞い上がったドイツメディアは「独仏枢軸」などと言い始め、マクロン大統領とメルケル首相が親密にハグし、キスする写真が、しばしば紙面を飾った。

〔PHOTO〕gettyimages

6月21日付の南ドイツ新聞のインタビューで、マクロン大統領は次のように語っている。

「問題は、ヨーロッパが何十年もかかって世界に浸透させてきた根本的価値観を守るのか、あるいは、偏狭な民主主義と独裁政権の増強を目の当たりにして、尻込みするのかということだ」

アメリカ、ロシア、ハンガリー、ポーランド、トルコなどに対するあてつけであることは明らかだ。さらに、次の言葉もすごい。

「東欧の指導者の何人かは、EUを冷笑するような態度を取っている。彼らはEUを、価値観を共有せずにお金を分配するために役立てている。EUはスーパーマーケットではない。運命共同体なのだ」

並み居る政治の先輩たちに向かって、国際舞台でほぼ未経験の若い大統領が放つ言葉としては、異色というよりほとんど異常だ。各国の首脳たちはもちろん、「東欧の指導者の何人か」はとりわけ立腹しただろう。

 

それにしても、マクロン大統領はなぜこれほど自信があるのか? 彼をつけ上がらせているのはメルケル首相か、ドイツメディアか、それとも、さらにその後ろにいる国際金融資本なのか?

7月1日、フランスのストラスブールで故コール独首相のEU葬が行われ、政財界から教会関係までEUのエリートが集合したが、マクロン大統領はメルケル首相などと並んで、主要スピーカーの一人だった。

スピーチを終えた彼は、全員注視の下、コール未亡人を無視して、最前列に座っていたメルケル首相のところに来た。目の前に差し出された手を座ったまま握り返したメルケル首相を、なぜかマクロン大統領はぐいと引っ張って立たせた。場違いな行動に、メルケル首相が一瞬、戸惑ったのが中継の画面でもよくわかった。その途端、マクロン大統領はメルケル首相を優しく、大げさに抱きしめたのである。

〔PHOTO〕gettyimages

コール前首相の葬儀は、大いにいわく付きのものだった。コール・メルケル関係はここ20年間冷え切っていたし、コール未亡人とメルケル首相は、ほとんど敵対していたと言ってもよかった。だからこそ国葬ではなく、EU葬という形が取られたのであるが、その葬儀で未亡人を無視し、悲しんでもいないメルケル首相を情感豊かに抱きしめるのは、不可解なスタンドプレーだった。

しかし、それをマクロン大統領はわざと演じた。このシーンを見ながら、将来、EUの主導権は誰の手に握られることになるのかと首をかしげた人は多かったはずだ。