選挙 政局

前原・枝野、両氏いずれも信用できないシンプルな理由

これじゃあどっちが代表になっても…
長谷川 幸洋 プロフィール

具体的に何をするのかといえば「介護職員や保育士、看護師などの賃金を底上げして可処分所得を押し上げ、そうした分野の雇用を増やす」。それが「低賃金労働者の賃金を上げて、消費の拡大につながる。これこそが民進党の経済対策、景気対策」と主張している。

介護職員や保育士、看護師の賃金引き上げは私も賛成だ。だが、それが「経済全体の消費拡大につながる」というのは大風呂敷である。それは個別サービス分野の話であって、マクロ政策ではない。

前原氏は何を言っているか。「(もはや)成長が前提ではなくなった。この20年間、国民の所得は減り、貯蓄は減り、貯蓄がない世帯が増えた。自己責任型社会では成り立たない」と述べたうえで、子育て支援の充実と実質的な教育無償化を進める考えを示した。一人あたり国民所得はたしかに民主党政権時代に低迷したが、安倍晋三政権になった2012年以降は4年連続で増加している(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/hitoriatarigdp20161222.pdf)。

枝野氏と前原氏に共通するのは、財政政策と金融政策、規制改革の組み合わせがマクロ経済政策の世界標準であることをまったく理解していない点である。両氏には主要国首脳会議(G7)や20カ国・地域首脳会議(G20)の共同声明を一度、しっかり熟読されることをおすすめする。

そこでは景気を回復させるために「財政、金融政策と規制改革を軸にした構造政策」を総動員する、と繰り返し語られている。これはアベノミクスそのものだ。アベノミクスとは実は名ばかりで、中身は世界で常識の政策体系である3本柱を語っているのだ。

私が出演しているテレビの『そこまで言って委員会NP』で最近、ご一緒した民進党議員は、財政破綻を避けるため消費増税と金融引き締めの必要性を訴えていた。これに蓮舫民進党が提出した特区廃止法案を加えると「増税+金融引き締め+規制改革断念」というマクロ政策になる。

そんなマクロ政策が本当に実行されたら、日本経済はデフレ脱却どころか再び、デフレに舞い戻るのは確実だ。G7やG20の共通認識とは真逆だから、日本は各国からも批判を浴びるだろう。枝野、前原両氏は会見で消費増税について明言を避け、態度をはっきりさせなかった。隠れ増税派でないことを願うばかりだ。

「9条改正」を認めていたのに

首を傾げざるをえないのは、憲法についての認識である。枝野氏は「立憲主義を破壊し、専守防衛を逸脱した集団的自衛権の一部行使容認はとうてい認めることはできない。これを前提にした9条の改訂は党綱領に反するものとして徹底的に戦う」と述べた。

だが、枝野氏は2013年9月、雑誌『文藝春秋』に寄稿した論文で個別的および集団的自衛権の行使に賛成し、かつ国連平和維持活動(PKO)への参加も容認する私案を発表している(https://www.cataloghouse.co.jp/yomimono/140104/index1.html)。

私案は戦争放棄や戦力の不保持を定めた9条を維持したうえで、新たに9条の2を追加し、その第1項で個別的自衛権を認めるとともに「内閣総理大臣は自衛権に基づく実力行使のための組織の最高指揮官」という言い方で自衛隊の合憲化にも踏み込んでいる。

続けて第2項では「他国の部隊」に急迫不正の武力攻撃がなされたときについても、自衛権の行使を認めた。つまり集団的自衛権の行使である。9条の3では国連PKOへの参加を認めたうえで、PKO活動が武力攻撃されたときは必要最小限の自衛措置をとることができるとした。これは「駆けつけ警護」の容認である。