国際・外交

トランプが選ぶ対北戦略は、「小型戦術核使用」「地上軍投入なし」か

その後は中国に丸投げ、日本は遭難状況
李 英和 プロフィール

これに加えて、韓国を狙う北朝鮮軍の火砲を制圧するべく、トマホークミサイルなど通常爆弾での軍事施設や指揮所への大規模空爆が敢行されることになる。その場合でも「開戦後1ヶ月間の死者が米軍10万人以上、韓国人100万人以上」という従来の俗説は退けられる。

これが「(北朝鮮兵が)何千人」(トランプ発言)という被害予測の根拠となるようだ。

 

中国とのディールの落ち着きどころ

この予測の当否はさておき、トランプ発言からは米軍が北朝鮮領土に地上軍を送り込む意図のないことが窺える。文在寅大統領は韓国軍を北上させる意思は全くない。そうなれば、先制攻撃完了後の北朝鮮、つまり金正恩後の北朝鮮では、どのような勢力が権力の空白を埋めることになるのだろうか。

金正恩の手からこぼれ落ちた旗を拾い上げて徹底抗戦を主張する者は、せいぜい15名ほどの最側近勢力に限られる。これを素早く除去すれば抵抗は止む。

残存する大量破壊兵器の廃棄、秘密警察など独裁治安機関の解体、戦後の治安維持と民生復興――。これらの難題を首尾良くこなせる勢力は、野戦軍を中心とする北朝鮮の軍部しか存在しない。

北朝鮮の野戦軍は、人脈面でも経済面でも、中国軍と伝統的に絆が深い。この点を勘案すれば、「金正恩後」の北朝鮮では、親中政権誕生の公算が極めて高い。そうなれば、中国が強く抱く「緩衝地帯消滅」の懸念はなくなる。

アメリカは、北朝鮮の核ミサイル脅威に係わる能力と意思の完全除去。中国は、緩衝地帯の確保と北朝鮮の事実上の属国化。米中両国にとって、それほど悪い「取り引き」ではないように見える。