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星野源にも絶対わからない「東京五輪を開く理由」

あのCMにどうしても覚える違和感
森田 浩之 プロフィール

はたして大義はあるのか

そんななかで、なぜ東京はオリンピックを開くのか?

思い起こせば招致活動中、オリンピック招致に対する住民の支持は、2020年大会に立候補した都市のなかで最も低かった。オリンピックに尻込みする国や都市が増えているなか、東京が2度目のオリンピックを開く大義とは何なのだろう。

NHKの刈屋解説委員があげた5つのポイントに沿って考えてみる。

まず「国威発揚のため」や「国際的存在感」を高めるためというポイントは、1964年大会を開く理由としては当てはまっただろう。しかし日本が世界の大国となってから開催する2020年大会で大きなメリットになるかと考えると、いささかピンと来ない。

「経済効果」に期待する向きはもちろん多いだろうが、以前の記事(参照「東京オリンピック『経済効果予測』のオカシさを暴こう」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52141)で指摘したように、これほどいい加減で当てにならない指標もない。

「都市開発」は「経済効果」というポイントと重なるように思えるし、「スポーツ文化の定着」は他の4項目に比べると大会を開くメリットとしては小ぶりな感じがする。

なぜ東京はオリンピックを開くのか──この問いに対して納得できる答えは、なかなか見つかりそうにない。

 

「あの日を超える未来」とは?

そこで、星野源の出番となる。

東京でオリンピックを開く理由が見つからないなら、大会に向けて日本人をひとつにする大義がないなら、つくり出してしまえばいい。

競うべきライバルが見つからないなら、こちらもつくってしまえばいい。自分たち自身をライバルと位置づけてもいい。そう、〈ライバルは、1964年〉でかまわないのだ。

国民みんなが共有できるような大きな目標を見つけにくい時代に、ニッポンをひとつにするのはむずかしい。そこで人気絶頂の星野源が引っ張り出され、〈笑顔〉〈見る夢の大きさ〉〈人を思いやる気持ち〉〈こころの豊かさ〉で、1964年当時の日本人に負けるなと説くことになった。

オリンピックを開けば、2020年には本当に〈笑顔〉でいられ、〈こころの豊かさ〉を保っていられるのか。東京オリンピックにからんで、すでに私たちは笑顔ではなく、しかめ面をするようなニュースをたくさん見聞きさせられてきた。

大きなトラブルだけをあげても、新国立競技場の設計案が白紙撤回され、公式エンブレムも「パクリ疑惑」から撤回された。新たにコンペで決まった新国立競技場の設計案は、聖火台の設営を忘れていた。そのうえ、招致活動に裏金が動いたと英紙に報道される始末。

あと3年間の道のりは、どうなるのだろう?

ACジャパンのCMのバックに流れる星野源の曲「Hello Song」に、〈いつかあの日を/いつかあの日を/超える未来〉というフレーズがある。

〈あの日を超える未来〉──映像と合わせて聴くと、東京が輝いた1964年より素晴らしい未来がまもなくやって来るという意味に思える。

その未来とは、2020年のことだろうか?

答えは、星野源にもわからないにちがいない。