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星野源にも絶対わからない「東京五輪を開く理由」

あのCMにどうしても覚える違和感
森田 浩之 プロフィール

オリンピック開催のメリット

そもそも、1896年に始まった近代オリンピックは、今までなぜ開催されてきたのか。オリンピックの開催地には、どんな利益があると考えられてきたのだろう?

この点については、昨年のリオデジャネイロ大会後にNHK『おはよう日本』で刈屋富士雄解説委員が語った内容が論議を呼んだ。

「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への懸け橋だ!」をはじめとして、オリンピックの実況アナとして数々の名言を残している刈屋は、「五輪開催5つのメリット」として以下の項目をあげた。

1 国威発揚
2 国際的存在感
3 経済効果
4 都市開発
5 スポーツ文化の定着

 

このうち最初に掲げた「国威発揚」が、「オリンピックは国家間の競争ではない」と定めたオリンピック憲章に反するとして、刈屋の指摘は批判を浴びた。

だがオリンピックの歴史を振り返れば、刈屋のあげたポイントはまったくまちがっていない。むしろ、国家間の競争ではないというオリンピック憲章の規定が建前でしかないことに、多くの人が勘づいている。

「国威発揚」と言うと、ヒトラーが政治利用したと言われる1936年のベルリン大会が頭に浮かぶ。刈屋がそれをトップにあげたことも、批判を誘う大きな要因になったかもしれない。しかしベルリン以外の大会でも、国威発揚が目的ではないオリンピックなどあっただろうか。

たとえば、1964年の東京大会。敗戦からわずか19年後にこのメガイベントを開催する目的が国威発揚でなかったとしたら、いったいほかに何があるだろう。

国威発揚という言葉の響きはよくないが、当時の日本が1964年の東京オリンピックを成功させることが国際社会に復帰する第一歩と考えていた点は異論のないところだろう。

何かが変わりはじめた

そのあたりまでは、まだライバルはいたのだ。大会招致にも対抗馬がたくさんいたし、大会が始まればメダル争いも激しかった。

オリンピックが実際には国家間の競争であり、国威発揚の場であることは、大会期間中の新聞やテレビで報じられる国別のメダル獲得数が何より大きな証拠だった。

しかし、ここへ来て何かが変わりはじめた。

いくら国威発揚に効果的だとはいえ、オリンピックは金がかかりすぎるイベントになった。そのため、大会招致に住民の支持を得にくくなってきている。

17日間のスポーツ大会のために巨額の金を投じて街をつくり変えようという都市は、今ではすっかり少なくなった。

2022年の冬季オリンピックでも、オスロ(ノルウェー)とストックホルム(スウェーデン)が開催に住民の支持が得られないとして立候補を取り下げ、サンモリッツ・ダボス地域(スイス)や、クラクフ(ポーランド)、ミュンヘン(ドイツ)は住民投票で反対が多数だったことから招致を取りやめた。

結局、開催都市は北京に決まった。雪が降らない街だが、幸か不幸か、住民投票もない。