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警察 公安 インテリジェンス

「やばい、ドアを抑えろ!」活動家宅に侵入した暴走公安捜査官

ある公安警察官の遺言 第5回
極左過激派やオウム真理教事件など、昭和から平成にかけて日本を揺るがせた大事件の「裏側」で活動してきた公安捜査官・古川原一彦。その古川原が死の直前に明かした、公安警察の内幕やルール無視の大胆な捜査手法から、激動の時代に生きたひとりの捜査官の生きざまに迫ります。長年、古川原と交流を持ち、警察やインテリジェンスの世界を取材し続けてきた作家・竹内明氏が知られざる公安警察の実像に迫る連続ルポ、第5回(前回までの内容はこちら)。

「ドアを抑えろ!」

窃盗事件の捜査と偽り、まんまと日本赤軍の女性活動家が住む貸家の合鍵をせしめた公安部公安一課の警部補・古川原一彦は、留守を狙ってついに貸家に入った。

玄関が畳1畳、ドアを開けると3畳ほどの台所。左側に和室の6畳間、突き当りに6畳の洋室があった。

古川原はその時の様子をこう語った。

「俺たちは部屋の中をガサした。もちろん令状なんて持っていない。和室の押入れの下の段を漁っていると、衣装ケースがあった。そこを開けたら、洋服の中に札束があった。現金250万円だ。日本赤軍の資金力に驚いたね。佐々木(規夫)たち逃亡犯の逃走資金に使われているのだと思ったよ」

その時、1階の玄関の鍵を開ける音が聞こえた。

「やばい。帰ってきたぞ」古川原は金を衣装ケースに戻した。

「フルさん、まずいです。飛び降りましょう」後輩が窓を開けて言った。

「馬鹿野郎、失敗したら、死ぬぞ。ドアを抑えろ!」

 

階段を登る押し音が聞こえた。ドアは内側に押し開ける仕組みだ。

二人掛かりでドアを抑えた。ここで活動家に捕らえられでもしたら、恥ずかしくて目も当てられない。公安人生、いや警察官人生の終わりだ。