警察 インテリジェンス 公安

「公安が強盗に入る」と批難された非合法捜査のやり口

ある公安警察官の遺言 第4回
竹内 明 プロフィール

「最近、泥棒が多いんですよ」

それでも、古川原は次なる悪知恵を働かせた。窃盗事件を捜査中の「泥棒担当の刑事」と名乗って、活動家に部屋を貸している大家のところに通い始めたのだ。何度も通いつめ、活動家のことを聞き出した。

無論、大家の老人は借主が、日本赤軍の関係者であることなど知る由もない。若い女性に部屋を貸しているという認識しかなかった。

だが、この聞き込みで、女性活動家が長期外出している時には、大家が代わって郵便受けから新聞を抜いていることや、女性活動家が電気を常につけっぱなしにして外出することを知った。古川原は大家の老人に言った。

「最近、この辺りで泥棒が多いんです。彼らはどこからか合鍵を作って、盗みに入るそうなんだ。おたくの鍵もどこかでコピーされているかもしれない。近くの交番に泥棒が持っていた合鍵のリストがあるので照会してきてあげますよ。あ、そうそう。賃貸の部屋に入居されている方の鍵も見てきてあげます」

こうしてまんまと大家から合鍵を受け取り、近くの鍵屋に走った。当然、女性活動家の部屋の合鍵も作った。

この頃には、古川原は大家の日課も把握していた。夕方4時になると散歩に出かけるのだ。数日後の午後3時50分に再訪し、「泥棒に合鍵は作られていなかった」と安心させ、他愛もない話をした。すぐに大家がそわそわし始める。散歩の時間だ。

「ああ、散歩の時間でしたね。行ってらっしゃい。私は庭の立派な木でも見てから帰ります」

大家を送り出すと、古川原は外で待機する後輩を呼んだ。

おい、やるぞ

 

女性活動家の部屋は、敷地内にある二世帯住宅、その2階部分だ。

午後4時、大家も活動家もいない。古川原は堂々と玄関の鍵を開けた。玄関は1階の部屋と共用で、1階の住人も留守だった。

「靴を持って行くぞ」

後輩と二人、靴を手に持ち、古川原は忍び足で階段を登った。

第5回はこちら

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