警察 インテリジェンス 公安

「公安が強盗に入る」と批難された非合法捜査のやり口

ある公安警察官の遺言 第4回
竹内 明 プロフィール

CIAに眠り薬を借りようと…

数週間前のことだ。古川原は日本赤軍を支援している女性活動家の視察をしていた。この活動家は、目黒駅近くの戸建てに住んでいた。150坪の敷地に2棟。一棟には大家の老夫婦が住んでおり、もう一棟の二階建てが貸家だった。女性活動家は貸家部分の2階に住んでいた。

敷地は高さ3メートルの板塀で囲まれていた。女性活動家は、その裏口の潜り戸を開けると、いつも奇妙な行動をとった。素早く左右を確認し、誰かが歩いていると中に戻ってしまう。通行人がいないときに飛び出し、目黒駅に向けて猛スピードで走るのだ。

「これは公安の尾行を巻くための点検だった。俺も駅伝選手だったから走れば追いつくのだが、走って尾行すればバレてしまう。だから、目黒駅に尾行要員を待たせて張り込ませていた」(古川原)

駅に着いた後も、点検は激しかった。電車が到着しても乗り込まないのだ。何度も電車をやり過ごしている間に、ホームにいる尾行要員を確認する。尾行要員の顔が次々と割られていき、ついには尾行そのものを断念せざるを得なかった。

だが、これで諦める古川原ではなかった。アメリカ大使館に行き、顔見知りのCIA駐在員を呼び出して頼み込んだ。

「あんたらが使う眠り薬みたいなものはないのか? スプレーで吹きかけて眠らせるような薬が欲しいんだ」

するとCIAの男は言った。

「古川原さん、あなたが追っている○○に使うつもりですか」

CIAの男は活動家の名前を言い当てた。

「なんで知っているんだ」

「薬があるかどうかは調べてみます」

しかし、思いつきでやった突拍子もない行動はすぐにバレてしまった。

 

警視庁本部に戻ると、いきなり遣いがやってきて、「公安部長がお呼びです」と言った。部長室にいくと、公安部長が顔を真っ赤にして怒鳴った。

「お前、CIAに何を頼みやがった。二度とアメ大(アメリカ大使館)に行くんじゃねえ」

目的のためには手段を選ばない。古川原の悪名は公安部内に轟くことになった。