医療・健康・食 ブルーバックス

40代に告ぐ!医師がすすめる「アルツハイマー治療」の秘策

現在、糖尿病の人は必読です
ブルーバックス編集部 プロフィール

以後、アルツハイマー病に直接・間接を問わず治療効果があるとされる薬は、いまだに開発されていない。人類とアルツハイマー病との戦いは、これが現時点での偽らざる状況なのだ。

ドネペジルが効かなかった理由は、アルツハイマー病の発病のしくみを考えてみればわかる。現在では(まだ定説とはされていないが)、この疾患の原因物質と発病メカニズムについては、ようやく大筋が明らかになってきている。

ごく簡単に説明すると、アルツハイマー病は、アミロイドβタンパクという絹糸のように強靭な線維性のタンパク質が脳内に過剰に蓄積して、神経細胞に老人斑という塊ができることから始まる。

記憶などの情報は脳内で、神経細胞のタンパク質が次々に「リン酸化」されることで、リレーのように伝えられているが、老人斑ができると神経細胞のタンパク質は過剰にリン酸化する。この過剰なリン酸化が次々に伝わり、異常なタンパク質が神経細胞に凝集して神経原線維変化という反応を起こすと、毒性が生じ、神経細胞が次々に死滅していってしまうと考えられているのである。

一つの反応から始まって、次々と連続して反応が起きることをカスケード反応という。アミロイドβタンパクの蓄積に始まる一連のカスケード反応がアルツハイマー病を引き起こすというこの考え方は1992年に提唱され、「アミロイド・カスケード仮説」と呼ばれた。仮説とされてはいるが、現在ではほぼ真実であろうと考えられている。

ドネペジルが開発された当時は、まだアミロイド・カスケード仮説は提唱されていなかった。一方で、アルツハイマー病患者の死後脳では、アセチルコリンという神経伝達物質が減少していたことから、脳内でのアセチルコリンの分解・消失が発病の原因であろうとする「コリン仮説」が唱えられていた。

ドネペジルは、アセチルコリンの分解を阻害することを目的とする薬だったのだ。現在では、アセチルコリンの減少はアルツハイマー病の進行にともなう結果にすぎないと考えられている。

アルツハイマー病を防ぐには、アミロイドβタンパクの蓄積から始まる「魔のリレー」の発動を防がなくてはならない。ようやくそこまではわかってきたのだが、では、なぜアミロイドβタンパクが蓄積するのだろうか?

この謎の答えは、意外なところから明らかになってきた。

糖尿病はアルツハイマーの予備軍

糖尿病の患者がアルツハイマー病にかかりやすいことは、近年、国内外の研究で数多く報告されていて、いまでは周知の事実となっている。たとえば日本の九州大学が福岡県久山町の60歳以上の男女1500人以上を15年間にわたって追跡調査し、糖尿病患者のアルツハイマー病罹患率は非糖尿病者の2倍にのぼるとした報告は世界的に有名である。

近年、糖尿病は全世界で増加傾向にあり、日本でも糖尿病人口は1950年の約30万人から、2015年には約721万人と、実に20倍に増えている。現在、40歳以上の日本人の4人に1人が糖尿病かその予備軍ともいわれ(見逃されている患者も多いと思われる)、これもまた、日本人にとって「国民病」の一つといえる。

Photo by iStock

よく知られているように糖尿病とは、血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれたり、エネルギーとして消費されたりするのを促す「インスリン」というホルモンが不足している、もしくはうまく作用しないために血糖値が上昇し、それによって血管が強く冒される病気である。

糖尿病が進行すると、数年のうちに神経症・網膜症・腎症という三大合併症を発症し、足の潰瘍や壊死、失明、人工透析に至る。そのほか、心筋梗塞・脳梗塞や各種のがんを発病するリスクも高くなるなど、いまさらいうまでもなく、恐ろしい病気である。

では、なぜ糖尿病になるとアルツハイマー病にもかかりやすくなるのだろうか。その理由として、従来は、高血圧や脂質異常症などを合併して動脈硬化が進行し、脳血管障害を起こしやすくなるため、また、細胞組織のタンパク質が、高血糖状態が続くことで毒性をもち、老化を早めるため、などが考えられてきた。

しかし、実はこの二つの病気の間には、それだけではない深い関係があることがわかってきたのである。