介護

いま、後見人が親子の面会を禁止する驚愕のトラブルが続発中

そんな権限ないのに一体なぜ?
長谷川 学 プロフィール

そんな法律や条例はない

この母親は、以前は自分名義のマンションの一室に1人で住んでいた。ところが、5年前のある日、長男が知らないうちに、長女夫婦の判断で、埼玉県内の老人ホームに引っ越してしまった。車に乗せられ、連れていかれたのだ。

老人ホームに入居した際に登録した身元保証人は、長女の夫。そして引っ越しの5ヵ月後、長女の申し立てで弁護士が母親の補助人に就いている。長男と長女の対立構造から見れば、身元保証人、補助人ともに、「長女派」がおさえた形になったわけだ。

冒頭で紹介した「警察沙汰」に至る前から、長男は母親に面会するため、施設に足を運び続けていた。だが、施設側は「身元保証人の許可がないと面会させられない」とか「補助人が『母親と長男を会わせるな』と話している」といった理由をあげて、本来は中立の第三者であるべきにもかかわらず、実の親子の面会を妨害し続けた。

長男によると、施設側が作成した母親に対する「支援記録」には、「マンションの話が出たら、すぐに面会を打ち切るようにと補助人様からの指示あり」という記載があるのを、自分の目で確認したともいう。

 

あまりの対応に、長男は、当該老人ホームを管轄する埼玉県内の某市役所に「老人ホームに親子の面会を制限する権限はあるのか」と照会した。

すると、市役所側担当者は「面談条件について定めた法律や条例はない。会わせないのは施設側独自の判断だろう」と言い、「実の子どもと母親を会わせないのは補助人の権限を越えている。施設側とよく話し合ってほしい」と助言したという。

「会いたくない」はずの母親がにこやかに

その後、施設側は長男に文書で謝罪したものの、現場での対応は以前とあまり変わらなかった。

そして昨年8月、長男が再び施設を訪れた。だが施設側は「母親が会いたくないと言っている」などと言って会わせようとしない。粘った長男が「本当に会いたくないと母が言っているのですか? それなら一緒に母に会って確認しましょう」と提案。施設側と話し合いをしていた部屋を出ようとした際に、長男の使用している杖が、たまたま施設側幹部の椅子に触れた。これをもって施設幹部は「暴力だ。警察を呼べ」と部下に指示。ここから冒頭の「警察沙汰」に発展したのである。

実は私は、たまたま現場に居合わせたので、この日の騒動の一部始終を自分の目で見ることとなった。

警察官がやってきたあと、母親が居室のある2階から1階に降りてきた。そして長男夫婦に向かって、「よく来たねえ」と言い、にこやかに談笑を始めたのである。「会いたくないと言っている」という施設側の主張は、一瞬にして根拠を失った。警察官たちは白けた様子で引き上げていった。