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「ゴミ屋敷」や「だらしなさ」は病気か? なんでも医療化の功罪

新しい病気が次々生まれている…

ゴミ屋敷は病気のせい?

長く医者をやっているといろいろな患者さんと出会う。言い古されているとおり、健康や幸せは画一的だが、病気や困りごとは千差万別だ。

なかには、これまで聞いたこともない病気に遭遇することもある。たんに私の無知のこともあるが、新しい「病気」が近頃多くなったことには驚かされる。

その一つが精神疾患の一種「ため込み症」だ。近所迷惑としてニュースになるゴミ屋敷の住人といえばおわかりいただけるだろう。やっぱりあれは病気の一種なのかと思った方もいるかもしれない。

 

ためこみ症とは何か?

「ため込み症」は、2013年に初めて世界中で使われている診断マニュアル(アメリカ精神医学会の『DSM-5』)に病名が掲載された生後5年の「新しい」病気だ。その症状はわかりやすく言えば次の三つだ。

1.実際には価値がなくても、品物を処分しようとすると苦痛があって、捨てたり手放したりすることができない。
2.生活空間が品物でいっぱいで散らかっており、その部屋の本来の目的に使うことができない。
3.ため込みによって、本人がはっきりした苦痛を感じていたり、安全な環境の維持ができなくなったりしている。

ため込みというのは英語「hoarding(貯蔵する)」の訳である。英語ではこうした人々のことを俗に「hoarder(ホーダー)」と言う。

怖いもの見たさなのか、アメリカでは、ゴミ屋敷の住人や家族へのインタビューと片付け専門家による掃除を取材したリアリティTVが人気で2009年からシリーズ放映されている。

興味があれば"Hoarders"で動画を探してみるとよい。アメリカ流ゴミ屋敷のスケールの大きさに度肝を抜かれること間違いなしだ。

ゴミ屋敷と言えば「ネコ屋敷」との連想ゲームではないが、自分が世話しきれないほどの動物を飼う人々もいる。

これは「動物ため込み症」という病気とも言われている。犬や猫を何十何百匹と抱え込んで制御不能になり、えさ代で経済的に困窮し、不潔な環境で病気になった動物を放置しているために、近所からの悪臭や騒音の苦情が殺到するという話も耳にする。

イメージ的には「猫おばさん」だ。まさにその通りで、アメリカでの調査では40代以上の独身ないし離婚歴のある女性が多いらしい。ただし、「動物ため込み症」は精神疾患診断マニュアルに掲載されているわけではない。