現代新書

学校では習わなかった…日本を襲う「悲劇的な未来」を回避する方法

「未来から見た日本」と「過去から見た見本」
堤未果×矢部宏治

でもその一方で、長年アメリカ研究をされている著名な学者の先生たちから「目からウロコが落ちた。ありがとう」とうれしいお手紙をいただいて励まされたり、あの本には10年経ったいまでも、いろいろな立場の人から毎年お手紙がたくさん来るんですよ。

週末に広場で行われる無料医療サービスに集まった人たち。バージニア州ワイズ(Photo by gettyimages)

矢部: 人間はやはり、自分の今までの思考の枠組みを壊されるようなことには、抵抗しますからね。

堤: はい。でも時代はどんどん先に進んで状況も変わってゆきますから、その時の真実を手にして過去の思いこみを壊すたびに、新しいものが見えますよね。その選択肢を差し出すのがジャーナリストの仕事なので……。

矢部: 確信犯なわけですね(笑)。ぼくが驚いたのは、日本の記者クラブがすごく劣化していて、本当のことを伝えないというのは、みんなよくわかっている。でも、あの素晴らしかったニューヨーク・タイムズなど、アメリカのジャーナリズムのメディアが、いまでは大手娯楽産業などをトップとする6つの系列に統合されてしまって、まったく本当のこと伝えられなくなっている、と。本当にそうなんですか。

堤: そうですね。去年もCNNの一人の重鎮の女性が辞めたんですが、その理由が、「現政権と大統領の御用報道はもう耐えられない、これはジャーナリズムじゃない」と。この話を日本でするとこういう反応です。「FOXじゃなくてCNNなの? まさか?」って。

矢部: そうですね。

 

堤: いま矢部さんがおっしゃった記者クラブへの構造的な不信感というのがあればあるほど、ニューヨーク・タイムズやCNN、ワシントン・ポストなんかがキラキラして見えるのでしょう。もちろんアメリカのジャーナリズムが輝いていた時代というのはありました。

現地のジャーナリスト仲間とよく話しますが、彼らは皆、ベトナム戦争の頃、ウォーターゲート事件は黄金だったと目を細めますね。けれど時代が変わり産業構造が大きく変えられるとジャーナリストの誇りや倫理も市場にのみこまれていった。いまや「まともなジャーナリズムはいのちがけ」とブラックジョークが飛び交う中で、危機感が広がっています。

アメリカ市民のいまの苦しみは「日本の近未来」

矢部: 私もちょうど7年前に鳩山政権があっけなく崩壊したときに、ものすごく疑問を感じて、沖縄に行って「沖縄本島内の米軍基地を全部撮影する」というテーマの本(『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』書籍情報社)をつくったんです。

堤: カメラマンの方と二人で回ったというあのご本ですね。

矢部: その本をつくったときぼくも、ある大手通信社の元写真部長の方に言ってもらったんですが、「新聞社の特派員も、もう戦後何百人も沖縄に来てるけど、ほとんど普天間と嘉手納の写真しか撮ってこなかった」っていうんですね。他の20いくつもある基地のことは、ほとんど知らなかったというんです。

堤: 7年前ですか。

矢部: はい。ちょうどその沖縄取材をした直後に3・11が起こった。堤さんが2001年にニューヨークで9・11に遭遇・被災され、それから「真実の情報」を求めてジャーナリストとしての活動を始められた。そのちょうど10年後に、日本人もまったく同じような経験をするわけですね。だからこそ堤さんのアメリカ報告が、3・11後の日本人の心に強く響いたんだと思います。

私の方はこの7年間、日米間の本当の法的な構造、法的な関係がどうなってるんだということをずっと調べてきました。それで、去年だいたいわかったんです(笑)。