資本提携を発表したトヨタ自動車・豊田章男社長とマツダ・小飼雅道社長 photo by gettyimages
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トヨタとマツダが資本提携に踏み切った「やむに止まれぬ事情」

実は、国家レベルの利害衝突が背景に…

「積極的な挑戦」はあくまで一側面

豊田章男・トヨタ自動車社長と小飼雅道・マツダ社長は8月4日、そろって都内で記者会見し、連携強化のため、従来の業務提携から資本提携にステップアップすることに合意したと発表した。それぞれが相手方に500億円ずつ出資する。

提携強化の目玉は、4年後をめどに米国で新たな合弁の製造工場を稼働させることだ。豊田社長は、「(今年初めに米国生産の拡充を迫った)トランプ米大統領の発言はまったく関係ない」と否定したものの、保護主義化する米国で持続的なプレゼンスの拡大を狙っていることは明らかである。

また、具体的内容は今後詰める段階だが、EV(電気自動車)の共同技術開発を協力分野に盛り込んだことも重要だ。

マツダの小飼雅道社長提携を発表するマツダの小飼雅道社長 photo by gettyimages

この背景には、米、英、仏、中、印など自動車市場の大きな国々で、両社が強みを持つハイブリッド車を含むガソリン車やディーゼルエンジン車などを締め出す動きが加速していることがある。

しかし、これらの施策は地球温暖化対策(CO2の排出削減策)として見た場合、勇み足で逆効果になりかねない乱暴な政策だ。トランプ大統領の保護主義とさほど変わらない、筋悪の政策にふり回されているのが実情と言っていい。

両社の資本提携には、自動車のコネクテッド化(常時通信機能を装備すること)、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)化、自動運転化といった歴史的なイノベーションへの前向きなチャレンジという積極的な側面と同時に、拙速な諸外国の規制で守勢に立たされ、やむにやまれぬ側面があることを抑えておきたい。

 

IoT化やAI化の加速に危機感

世界の自動車産業はいま、「ドイツ人のカール・ベンツがガソリンエンジンで走る三輪自動車『パテント・モトールヴァーゲン』を作り、その関連特許をすべて取得した1886年以来約130年ぶり」とか、「米国人のヘンリー・フォードが『T型フォード』の大量生産を開始した1908年以来約110年ぶり」と言われる、大変革期に直面している。

それには、幅広い変化が含まれる。IoT技術とAI(人工知能)を組み合わせて行う自動運転のような純粋なイノベーション(技術革新)を契機に、グーグルやアップル、アマゾンのような異業種が既存の自動車メーカーにとってかわるのではないかといった産業間競争の加速、消費者が自動車を所有せずに必要な時だけ借りて使うシェアリング・エコノミーの登場など、社会構造まで一変させかねない潮流だ。

今回のトヨタとマツダの提携強化に関するプレスリリースには、4つの具体的な合意内容が記されており、その第3の項目である「コネクテッド・先進安全技術を含む次世代の領域での協業」が、大変革期のIoT化やAI化の流れのなかで、両社が連携していこうという戦略に当たる。

売り上げ規模がトヨタの8分の1以下のマツダにとって、自社の研究開発費だけで単独開発をしていくことは容易ではない。一方、自社技術を広く普及させ、その技術を使った自動車市場を作り、競争を優位に進めたいトヨタにとって、マツダは願ってもないパートナーだ。この面で、間違いなく両社の利害は一致したと言える。

連携強化にあたって、巨大なトヨタがM&A(企業の合併・買収)によって一方的にマツダを飲み込んでしまうのではなく、対等な関係作りにこだわっているのも、日本的あるいはトヨタ的な経営の特色だ。

そのため、両社は平等に500億円ずつの相互出資を行うという。この結果、トヨタはマツダの発効済み株式の5.05%を、同じくマツダはトヨタの0.25%を取得することになる。具体的な出資は、新株や自社保有の自社株の第3者割当に応じる形で行う計画だ。