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学校・教育

クラウドファンディングで「ひとり子育て」…斬新なアイデアの源流

赤ん坊の世話は小説以上に大変です

もしも、ホストがイクメンになったなら…そんな“変化球”の設定で子育ての奮闘を描いた小説『キッズファイヤー・ドットコム』。著者である海猫沢めろんさんご自身の子育て体験も踏まえ、この小説を書いた意図などをお聞きしました。

中高生でも面白く読んでほしい

―著書の『キッズファイヤー・ドットコム』はある日突然、見知らぬ赤ちゃんを託されたカリスマホストが、ITを駆使して子育てをする。破天荒な設定の“イクメン小説”です。

自分の子どもが生まれた頃、子育てをテーマにした執筆の依頼を受けたんです。でも、子育て小説というと、子どものいない人にはなかなか読んでもらえない。そこで今作は、子どもがいない人、極端に言えば中高生でも面白く読める作品にしようと考え、ホストが主人公という“変化球”にしました。

ただ、自分の赤ん坊の世話が想像以上に大変だったので、子どもが3歳くらいになるまで、書き始めることができませんでした(笑)。

―冒頭では、アクセサリーや髪型、歌舞伎町の熱気など、ホストの世界が細かく描写されます。

僕自身、20年ほど前に、姫路市でホストをやっていたことがあるんです。当時はホストというと珍しい職業で、お客さんも水商売の人ばかりだった。でも取材してみると、今はずいぶんカジュアルになりましたね。歌舞伎町あたりだと何十軒もお店があって、水商売に限らず、様々な人が気軽に遊びに行っています。

 

―主人公のホスト・白鳥神威は、理不尽な状況に置かれますが、すぐに頭を切り替えて赤ん坊の世話に取り組みます。

ホストの中には、受験勉強的な賢さはないんですが、自分が今やるべきことを本能的に察知して動くことのできる、ある種の天才的な人がいるんです。神威はそういうタイプのホストをイメージして書きました。

それに、もし目の前で赤ん坊が泣いていたら、「なんで俺が世話をしなきゃいけないんだ」なんて、いちいち迷っているヒマはないでしょう。

ミルクをあげるとか、おむつを替えるとか、とにかく動かなくちゃいけない。僕も子どもの世話をしている時は考えている時間なんてありませんでした。

日本で子育てする疎外感

―ホストという仕事と子育ての両立に悩んだ神威は、出資すれば子どもの成長を見守れるという「クラウドファンディング」を考案します。

今の日本では、高齢者が潤沢な資産を持つ一方で、若者が貧困にあえぐという「世代間格差」の問題がありますね。その格差をどうやって解消すればいいのか考えるうちに湧いてきたアイディアです。ネットで養育費を募った例がすでにあったんです。もちろん炎上してしまったようですが。

―保育園が少なかったり、子ども連れの入店を禁止する飲食店があったりと、子育てしにくい日本の現状も描かれます。

とりわけ東京は子どもに厳しいですよね。僕自身、子どもを連れて飲食店に入ろうとしたら、露骨にいやな顔をされた経験があります。

保育園に入れるのも大変です。公立はまず無理なので私立に入れると、最低でも月に3万円とか4万円もかかってしまう。これでは何のために子どもを預けて働くのかわからなくなってしまいます。

―保育園の問題は一向に改善されませんね。

僕が思うに、日本には子どもを育てることについての「ビジョン」がない。政治家や官僚は、未だに昭和の時代のように「放っておいても子どもは育つ」と思っているんじゃないでしょうか。だから、保育園にしても、数さえ作ればいいだろうと、駅の高架下とか、産廃処理施設のそばとか、とんでもないところに作ってしまう。

しかし海外、例えばフランスなどは、そんなひどい環境に保育園を作ることなどありえない。子どもにはきちんとした教育を受ける権利があり、大人がしっかり守らなければいけないという意識が強いからです。