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「フィリピンパブ嬢のヒモ」だった僕が結婚し、子供が産まれるまで

僕は日雇い労働へ、嫁は臨月までパブで働く

フィリピンパブ嬢のヒモだった僕が結婚し『送金地獄』にハマるまで」が大反響を呼んだ中島弘象さん。その後、フィリピンパブ嬢である奥様のミカさんがまさかの妊娠。異国の地での妊娠・出産はなかなかどうして大変だった…!?

予想外の妊娠

偽装結婚。月給6万円。月の休み2回。ノルマ、ペナルティー。暴力団の監視付きの家。そんな環境の中、フィリピンパブで働くフィリピンパブ嬢に興味を抱き、大学院での研究対象に彼女たちを選んだ。研究を進めていくうちに知り合ったフィリピンパブ嬢のミカと交際を始めたのは2011年7月。彼女との交際に対し周囲は大反対した。

彼女の背後にいる暴力団の影に怯えながら交際を続け、時には裸でミカの同居人兼友人の部屋の押入れに隠れ、時には閉店後のフィリピンパブに彼女の不当な契約内容について直接交渉しに行ったこともあった。

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厳しい契約も終え、自由の立場となり、交際を始めた頃は大反対していた僕の両親や友人もミカの人柄の良さに触れ、いつしか交際を認めてくれるようになった。2015年10月、僕とミカは結婚した。

就職活動に失敗しヒモ状態であった僕と、フィリピンの家族を支えるため、ミカはフィリピンパブと工場の仕事を掛け持ちしていたが、2016年11月、妊娠が発覚。

「あんたさぁ……自分の立場わかってるの?」

ミカのお腹の中に子供を授かったとわかってから、僕はすぐに両親に報告した。

僕の母は、呆れたという顔をしてこう言い、父はテレビを見たまま黙っている。

僕の仕事は日雇いの現場仕事。毎日あるわけでなく、不定期。僕はミカと1年前に結婚してから、ミカの稼ぎを頼りに生活していた。母が呆れるのも無理はない。

「頑張ります……」

僕は力なくこう答えるしかなかった。

ミカは、お腹が出てくるまでフィリピンパブで働き、僕は毎日、日雇い現場の仕事に出るようになった。

 

異国の地での妊娠はなかなか大変

産婦人科の定期検診には常に僕がついていかなければならなかった。ミカは、日本語の読み書きは全くダメ。難しい会話もわからない。車の運転免許も持っていないため、病院まで行くこともできない。

毎回、僕が病院の予約、送迎、書類への記入、医者からの話を聞いて、ミカにわかるように説明しなければなかった。 

「そろそろ、自分でできるようにならないと困るよ。いつまでたっても自分の名前も日本語で書けないなんて。少しは覚えてよ!」

「しょうがないじゃん! わからないんだもん! そうやって怒るんだったら、もうあなた来なくていい」

「来なくていいって、どうやって病院まで行くの?」

「そんなん知らんわ!!!!」

ミカにとって初めての妊娠。それも異国の地でだ。初めてのことばかりで不安だとわかっていても、病院へ連れて行くためには、日雇いの仕事を休まなければならず、その分、収入も減る。いつまでたっても簡単な日本語の読み書きもできないミカにイライラを募らせ、当たってしまうこともあった。

それでもお腹の中の子供は順調に育っていった。

「少しずつ形になってきたね〜」

「もう人間の姿だね〜」

「目がはっきりしてきたね〜」

子供のエコーを見ると、喧嘩していたことをつい忘れ、2人で喜んでいた。

ミカも家で自分の名前、住所を書けるように、何度も紙の上で書いて練習し、病院でも自分で名前を書けるようになった。