〔PHOTO〕gettyimages
メディア・マスコミ 天皇

天皇陛下「おことば」から1年、本当に議論は尽くされたのか

これまでの経緯を振り返る

明仁天皇の強い意思

あれからちょうど1年が経った。

象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」(以下、「お気持ち」と表記)――2016年8月8日午後3時から行われた、明仁天皇による自らの「お気持ち」の表明からである。

天皇はテレビやラジオ、インターネットなどを通じて、人々に自らの「お気持ち」を述べた。その後、マスメディアでは多くの議論が展開され、政府は「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(以下、「有識者会議」)を設置、そして、明仁天皇一代限りの退位を認める特例法が成立した。

とはいえ、それは約1ヵ月前の7月から突如として始まったものだった。7月13日午後7時、NHKが明仁天皇の「生前退位」の意向について、トップニュースで報道。それはNHKによるスクープであった。

このなかでは、①天皇がその位を生前に皇太子に譲る「生前退位」の意向を宮内庁関係者に示していること、②天皇自身が広く内外に「お気持ち」を表わす方向で調整が進められていること、③天皇が「憲法に定められた象徴としての務めを十分に果たせる者が天皇の位にあるべきだ」と考え、「今後、年を重ねていくなかで、大きく公務を減らしたり代役を立てたりして天皇の位にとどまることは望」んでいないこと、④こうした天皇の意向を、皇后や皇太子、秋篠宮も受け入れていると述べていたことなどが報道された。

以上のNHKの報道は、明仁天皇の「生前退位」の意向を前面に打ち出したものであった。むしろそれだけだったと言ってもよい。

 

NHKが政府や宮内庁の方針については言及せずに天皇の意思を大きく報じたことで、人々にそれを強く印象づけてそこに関心を集中させることに成功したのではないか。

それゆえ、天皇の意向がその後の「生前退位」問題の方向性を左右する要因になっていく。

宮内庁は火消しに走ったものの、各メディアは「生前退位」の意向を連日にわたって大きく報道していく。その後の報道でも、明仁天皇の強い意思が強調される報道が相次いだ。

それに加えて、また加齢に伴う健康状態の不安なども報道されたからか、世論調査では『読売新聞』『朝日新聞』ともに、生前退位に賛成が84%と、人々の間ではそれを認めるべきとの声が圧倒的となった(『読売新聞』2016年8月5日、『朝日新聞』2016年8月8日夕刊)。

政府や宮内庁も7月末になると、8月8日に天皇が自ら「お気持ち」を表明することを発表する。

そして当日を迎えた。

第一報から1ヵ月弱という短さでのタイミングということから考えれば、すでに第一報時にはこの「お気持ち」表明をすることは天皇やその周辺では固まっており、7月13日に「生前退位」の意向に関する報道、8月8日の「お気持ち」表明というスケジュールは決まっていたのではないだろうか。