新卒は完全に売り手市場。セブンアンドアイHDの入社式にて photo by gettyimages
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2019年に失業率ゼロ!? 果たして「1億総賃上げ時代」は来るのか

かつてない人手不足、そのとき企業は

人手不足が深刻化している。新卒採用は完全に売り手市場と言われ、コンビニや飲食店はパート・アルバイトを採用できず、厳しい営業を強いられていると聞く。

それもそのはずだ。農林中金総合研究所の南武志・主席研究員は、このままいくと「2019年には失業率ゼロ」に達すると試算する。いったいどんなことが起こるのか、それは日本経済にどんな影響を与えるのか。南研究員が詳しく解説してくれた。

 

2017年6月の失業率は2.8%、労働需給はさらに引き締まる方向にある。

安倍首相はアベノミクスの成果として雇用環境の改善を挙げることが多く、確かに、2013年以降は雇用者数の増加と労働参加率(=生産年齢人口に占める労働力人口の割合)の上昇が続いている。

しかし、先行きを展望すると、それを手放しで喜べる状況でもない。少子高齢化が進み、15歳以上65歳未満の生産年齢人口はすでに減り始めている。労働参加率についても、これ以上上昇する余地は少ないとの指摘もある。

足もとの雇用環境が改善され、失業率が低下しても、逆に労働力が不足することで経済成長や景気拡大が妨げられる恐れが出てくる。

失業率は18年に0.9%、19年に0%

ここで、ざっくりと労働需給の先行きを展望してみよう。まず、経済成長によって生まれる労働「需要」について考える。

GDPが1%増えたときの雇用の増加率を、過去のデータ(1995~2016年)から割り出すと、0.2%との結果が得られる。2016年の就業者数は6465万人だから、1%成長すれば約13万人の就業機会が生まれることになる。

最近の経済見通しを踏まえて、今後数年は1%台半ばの経済成長が続くとすれば、年間20万人ほどの雇用増が見込まれるわけだ。

ただし、アベノミクスが始まってからの平均経済成長率は年率1.3%、雇用は年0.7%のペースで増加している。そのため、GDPが1%増えたときの雇用の増加率は、過去のデータから得られる数値を大きく上回り、0.5%前後に達する。仮にその勢いが続いた場合は、年間32万人の就業機会が生まれることになる。

次に、労働「供給」について考えてみたい。

長らく「M字カーブ」を描いているとされた女性の労働参加率だが、このところの国民意識の変化や産休・育休制度の拡充などのため、20代後半から30代後半にかけての労働参加率が大幅に高まり、もはやM字カーブとは言いがたい。加えて、カーブ全体が上方にシフトしている。

女性社員たち女性の労働参加率はここ10年大幅に高まった photo by gettyimages

また、年金支給開始年齢の引き上げに伴い、60歳以上の希望者について雇用継続が義務化されたこともあり、この10年で60代の労働参加も増えた。

今後の労働力人口の推移はほぼ確定しているため、あとは労働参加率がどこまで高まるかが、労働供給のカギを握ることになる。労働参加率を2016年の水準で据え置くとすると、労働供給は徐々に減少することになる(なお、足もとでは引き続き労働参加率が上昇している)。

これらの試算から、2017年の失業率は2.0%、18年は0.9%、そして19年には0%に達すると予想される。

「失業率ゼロ」の意味するところは、働きたいと思う人がすべて働いている状態であり、なおかつ転職する人も即座に次の仕事が見つかるような状況である。

企業側から見れば、新たに雇用を増やしたい場合には、より良い就労条件を提示することで、他の企業から労働者を奪う必要が出てくる。

もちろんこれは数字上の話であり、現実社会では、政府が国民に強制労働でもさせない限り、「失業率ゼロ」はありえない現象だ。

さまざまなミスマッチ(スキル、地域など)や職探し期間の存在などもあり、ある一定の水準(いわゆる自然失業率[NAIRU=Natural rate of unemployment, それ以上下がるとインフレが加速するような失業率の下限])までしか低下しないと考えるのが一般的である。