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医師たちが告発「がん免疫療法、うかつに信じてはいけない」

藁にもすがる思いの患者をそそのかす

手術もできない、抗がん剤や放射線も効かない――そんながん患者が最後にすがりつくのが「免疫療法」。超高額な治療費がかかるが、効果は眉唾ものだ。悩める患者をカモにする「医療詐欺」を暴く。

「水を買え」と言う医者

「俺の命よりカネが大事なのか!」

晴山峰敏さん(仮名、当時64歳)は、妻や娘を口汚くののしった。

晴山さんは現役時代、大手の新聞社で働いていた。いわば情報のプロ。だが、そんな彼が自分の病気については、なにが正しく、なにが誤った情報なのか見極められず、すっかり混乱しているようだった。

晴山さんは3年前に膀胱がんで余命1年と宣告された。手術は難しいと言われ、抗がん剤の副作用に苦しみながら余命を延ばすしかなかった。晴山さんの息子が語る。

「いったんは運命を受け入れたようでした。しかし、見舞い客が持ってきた一冊の本を読んでから、すっかり様子が変わりました」

その本は、がんの「免疫療法」を奨める内容だった。免疫療法とは一言でいえば、患者自身が本来備えている免疫力を高め、がん細胞を退治する治療法のこと。

著者は都心部にクリニックを構える医師だった。

晴山さんは、藁にもすがる思いで、この病院にセカンドオピニオンを求めた。病床に伏せる晴山さんに代わって、妻と息子がクリニックへ相談に出向いた。

ところが、現れた医師は春山さんのがんの種類や病状も聞かない。紹介状すら開封せず、「すぐにでも今の病院を出られますか?」と尋ねた。

「帰りに受付で『水』を買っていくといい。水の効果でがんが小さくなれば、今の病院を出て、ワクチンを打てます」

高額だが効果のよくわからない「水」の購入を奨められ、妻や娘は、免疫療法を受けることに反対した。このクリニックの免疫療法は完全な自由診療で保険は利かない。

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治療費は数百万円はかかる。そこで晴山さんは冒頭のように、家族をなじることになった。

「カネが惜しくて、俺を死なせるのか……」

息子は「そこまで言うのなら」と父の意に従うことにした。仲の良かった家族が分断されたのは、初めてのことだった。

結局、妻と娘の反対を押し切り、免疫療法を受けることになった。

まずは検査を行い、がん細胞や免疫細胞の状態を調べた後に採血する。それから血液内の免疫細胞を活性化して、体内に戻す。この「採血→免疫細胞活性化→体内に戻す」という治療を2週間ごとに数回にわたってくり返す。

「1回にかかる費用は25万円ほどでした。通常は6回ほどくり返すとのことでしたが、なかなか効果が表れないので、10回ほど行った」(晴山さんの息子)

 

「もしかしたら」と思わせる

だが、高額な治療もむなしく、晴山さんの容態は悪化の一途をたどり、治療を中止して2ヵ月後に亡くなった。

「できる手はすべて打ったという意識はある。ただ、200万円以上もかけた治療で、果たして余命が延びたのかどうかはわからない。効果があったとしても数日分くらいのものではないか」(前出の息子)