オリンピック 週刊現代

本物のヤクルトファンに学ぶ「負けても怒らない」精神

1勝の喜びを噛みしめる幸せがある
週刊現代 プロフィール

一勝二敗で御の字だ

'80年代、Bクラス9回と低迷したヤクルト。苦しい時期を正捕手として支えた八重樫幸雄氏もこう語る。

「プレーボールが掛かってからの神宮球場の空気は、後楽園球場や東京ドーム、甲子園とは違いましたね。チームを勝たせるために応援するファンばかりではなかった気がします。

『お父さんが国鉄で働いてたから』とか『ちょっと野球観戦したいな』という感覚で球場に来る人が多かった。

でも、ここぞという時に叱咤激励してくれるファンもいました。ファンと選手のあいだに高い敷居はなくて、みんな同じ『仲間』っていう雰囲気がヤクルトには昔からありましたね」

Photo by GettyImages

前出・崔氏も「ヤクルトにはクラブチーム的な雰囲気を感じる」と言う。

「選手に対する強烈なヤジとか批判は白眼視するような風潮が神宮球場にはあるね。同じ東京に本拠地を置く巨人はみんなの憧れの的で、選手はファンの『代弁者』。

うがち過ぎかもしれないけど、巨人を応援するために東京ドームに集まることは、ちょっと自己満足なところがあるんじゃないかと感じてしまいます。

一方でスワローズとそのファンはクラブチーム的で距離が近く、だからこそ本物の東京ローカルっぽさがあるんですよね。これは国鉄、そしてサンケイ時代から変わらないと思います」

前出・煙山氏も「試合を見ているだけで楽しい」と話す。

「'80年代に監督を務めた関根潤三さんは『一勝二敗の勝者論』という本を出しています。その中で関根さんは『人生、一勝二敗で御の字だ』と語っていて、『それでは優勝できないんじゃないか』と思うところもありますが、素晴らしい人生観ですよね。

スワローズは勝ちにあんまりガツガツしないファンが大半ですから、今回のように暴動騒ぎを起こす人も本当に少数派なのでしょう。なにしろ12球団で唯一と言っていいぐらい、ユルい気持ちで試合観戦に行けるチームですから」

 

試合結果に過度な期待をすることなく、「一勝二敗で御の字」の精神でチームを見守っていく。これが本物のスワローズファンの「野球哲学」なのだ。

「週刊現代」2017年8月12日号より