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オリンピック 週刊現代

本物のヤクルトファンに学ぶ「負けても怒らない」精神

1勝の喜びを噛みしめる幸せがある

神宮球場にぶらりと立ち寄って、気楽に観戦できるだけで十分。1勝が見られればラッキーだ―。なぜかアンチが少ないスワローズ。その理由は、温かくチームを見守るファンが多いからかもしれない。

「東京のいい子」が応援する

「ヤクルトの選手は、一生懸命闘う選手が多いですね。負けても悪態をつくことはありません。ではどうするかというと、素直に落ち込んでいる。そういった選手の姿を見ると、『なんとかしてやりたい』と思い、かえって応援に熱が入るんです。

選手一人ひとりから『哀愁』が漂っているところがヤクルトのいちばんの魅力ですね。

今年の戦力や順位について、いろいろな見方をするファンがいると思いますが、どれだけ負けが続いていても淡々と応援するのがヤクルトファンのあるべき姿のひとつだと思います」

このようにヤクルトへの思いを語るのは、ファン歴30年以上の脚本家・ジェームス三木氏だ。

 

5月末からは10連敗、さらに7月頭からは14連敗。優勝はもちろん、クライマックスシリーズ進出の可能性もとうに消えた。

だが不思議なことに、この球団には過激な批判やヤジを飛ばすファンが少ない。苦しい時期を温かく見守る、「大人」のファンがたくさんいるのだ。

国鉄時代からのスワローズファンという映画監督の崔洋一氏も次のように語る。

「僕がスワローズのファンになったのは小学生のときです。やっぱり400勝エース、金田正一の存在が大きかった。でも好きになったとはいえ、国鉄は弱くて、平気で首位と40ゲーム差くらい開いてしまうこともあったね。

当時の東京の学校では、クラスの男の子の8割以上は巨人ファンなわけだけど、判官贔屓なところがある僕としては『東京のいい子が応援するのは巨人じゃなくてスワローズだ』と思っていた。

言ってみれば負け惜しみなんだけど、だからこそ負ければより応援したくなったんだよね」

そもそも、ヤクルトは巨人やソフトバンクのように、資金力が豊富な常勝チームではない。たしかに'90年代、野村克也監督が築き上げた「ID野球」黄金期は強かった。

さらに古田敦也や宮本慎也ら「野村チルドレン」が主力として活躍し、日本一を勝ち取った'01年、そして山田哲人がトリプルスリーを達成しチームを牽引した'15年の優勝も記憶に新しい。

山田哲人Photo by GettyImages 山田哲人

だがあくまで、本物のヤクルトファンの認識は「弱い球団」なのだ。Bクラスは'50年の2リーグ制以降48回、最下位は15回、12年連続Bクラスだったこともあった。16連敗のセ・リーグ記録を打ち立てたのは、他ならぬ'70年のヤクルトアトムズである。強かった時期は決して長くない。

負けるのが好きな球団というわけではもちろんない。むしろ、乏しい資金力のなか、国鉄、サンケイ、ヤクルトと親会社の変遷を遂げながらも、スワローズはセ・リーグを70年近く戦い抜いてきた。

巨人・阪神らに虐げられてきた暗黒の歴史もぐっと呑み込んでいるからこそ、本当のファンはこのチームを長く愛し続けられるのだ。