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退職前のサラリーマンを襲う「役職定年」実はこんなに怖い

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もうゴルフにも行けない

また、大手化学メーカーの元営業部長(60歳)は、役職定年の制度自体に納得していない。

「役職定年の壁を突破できるのは、同期の中で1割にも満たないことはわかってはいました。とはいえ、昨日まで部長と呼ばれていたのが、◯◯さん、と名前で呼ばれる。

それもかつての部下からそう呼ばれるのは屈辱です。出世競争に敗れて左遷されるとか、成績を出せずに降格されるのなら、納得はできます。しかし、役職定年は、年齢だけで役職を奪い取る制度。これが釈然としない。

役職定年になって年収は35%ほど下がりました。小遣いも半分に減らされた。これまでは昼食を近所のレストランで取っていたのですが、女房と相談して、弁当を持って行くことにしました。それを見た女子社員がクスクスと笑っていたときの屈辱は忘れられません」

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まさに今年、役職定年を迎える、バブル世代の大手電機メーカーの現役担当部長(53歳)にも話を聞いた。

「課長から担当部長は53歳、統括部長は55歳、部門長は57歳で役職定年を迎えます。なので、私は来年度の4月から別の役職になるでしょう。

私が部長だった時、役職定年になった50代の元課長2名が部署に入ってきたことがありました。この人たちが使いにくかったんですよ。モチベーションが続かないし、プライドも高いので、部署内で軋轢も起きていた。年下の上司である新任課長に対して、自分のほうが能力があるとマウンティングをしたり、公然と課長を批判したり。

そりゃ、年下の上司より、自分のほうが仕事ができるという気持ちはわかります。役職定年は年齢に沿った仕組みで、若いから優秀とも限りませんから。一方で役職定年は若い人が役職に就くチャンスでもある。それを支えてあげるのが、先輩の役割でしょう」

結局、この担当部長は二人を呼び出し、「あなた方はこの部署に合わない」と言い渡したという。結局、一人は異動し、もう一人は転職をした。

「立場上、私は役職定年者の気持ちも、新任課長の気持ちも両方ともわかるんです。

ただ、それが自分自身の身に起こるとどうなるのか、それがわからない。いざ、私も年下の上司に仕えたら、私がかつて追い出した役職定年者と同じような振る舞いをしてしまうかもしれません。達観して年下の部下を支えられるか、不安な部分があります」

かつて部下にした仕打ちがそのまま自分に返ってくる。これもまた役職定年者を待ち構える試練である。中堅電機メーカーの元営業所長(59歳)は、かつて「鬼所長」と呼ばれていた。

「私はこれまで、一貫して営業畑でしたが、部下に対してはかなり厳しく接していました。私が若い頃の上司もそうでしたし、それが当たり前と思っていた。

本社での会議を終えて支店に戻り、部下に会議の内容を説明する際、気に食わない部下に対して『君は参加しなくていい。それより契約を取ってこい』と追い返したこともありました。

今回、役職定年を迎え、同じ支店の次長になりました。次長と言っても部下はいません。それだけでも屈辱なのですが、なんと今の支店長が、当時、私が厳しくあたった部下なのです。

当然のように、かつて私がやったことを、そのままやり返されました。支店の営業方針を決定する会議の時、私も会議室に行ったら、『いや、◯◯さんは結構です。自分の仕事をしてください』と締め出された。

ドアの向こうではどっと笑い声が上がりました。自業自得といえばそれまでですが、娘が結婚するまではなんとか会社にしがみつこうと思います」

 

会社で居場所がなくなったことを、家族に説明するのも辛い。大手食品メーカーの元部長(62歳)がこんな経験を明かす。

「私が以前、役職定年を言い渡されて困ったのが、家族への説明です。私自身、役職定年を理解していなかったのは、自分が対象になるとは夢にも思っていなかったから。最初、部長を外されることになったと妻に告げたときは、『会社のおカネでも使い込んだの?』と心配されたほどです。

私の趣味はゴルフでしたが、給料が減ったため、妻からは小遣いを半分にされ、そんな余裕はなくなりました。さすがにプライドがあり、外部に部長を外されたからとはいえなかったので、毎週、断る言い訳を考えるのに疲れましたね」