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ライフ 週刊現代

退職前のサラリーマンを襲う「役職定年」実はこんなに怖い

いまから準備しておいたほうがいい

こんなはずじゃなかった――。ゴールを目前に控えて訪れる「屈辱の日」。権力と権威を奪われ、年下の上司の顔色を窺う生活。今から準備しなければ、会社員人生の最後の数年が「針のむしろ」になる。

もっと出世するはずだった

自分は大企業の管理職だったのだ。役職定年になって管理職を退いても、社内、社外問わず、有益な人材として引く手あまたのはずだ―。

そう思うのは多くの場合、勘違いだ。パナソニックOBが言う。

「うちは55歳前後で役職定年となり、役職定年者にはネクストステージパートナー制度という再就職先を斡旋する制度が用意されています。これは人材派遣会社を経由して、再就職先を探すというもの。

しかし、4社も5社も再就職試験を受けては落ち、1年が過ぎることも少なくない。その場合は、会社に頼み込んでどこかに配属して残してもらうんですが、これはみじめですよ。

周りの部員は経緯を知っていますからね。元管理職であろうとも、ダメ社員のレッテルを貼られ、まったく相手にしてもらえません。結局、パナソニックの課長をしてきただけでは、世間ではまったく通用しないと思い知らされるんです」

 

一定の年齢になると、能力にかかわらず、自動的に管理職の職務を解かれる―これが役職定年だ。各社によって制度は様々だが、一般に「53歳までに課長以上にならない場合」、その次は「57歳までに部長以上にならない場合」に管理職から降格されることが多い。

会社側は「これまでのキャリアを活かして、今後も頑張ってくれ」と耳触りのいい言葉を言うが、実際は部下もおらず、満足な仕事ができないケースがほとんどだ。

これまでのキャリアと畑違いの部署に飛ばされることもよくある話。役職定年は、大企業の約5割で導入されているが、多くのサラリーマンがその現実に向き合っていない。

自分はもっと出世するに違いない。部課長で終わるはずがない。そんな思い込みが、不都合な現実から目を背けさせる。

富士通グループでは彼らの処遇に頭を悩ませている。現在はグループ会社に転籍している本社の元部長がこう話す。

「一昔前ならば、役職離任(富士通では役職定年をこう呼ぶ)した社員が、とくに何の仕事もせずに同じ部署にそのまま残っても大して気にもしていませんでした。

しかし、現在は役職離任者の人数が増えて、部署の仕事の邪魔になっています。元管理職の年上社員に現場の社員は遠慮する。一方で、役職離任者は何かと現場に口を出してくる。お互いが部署内でギクシャクする環境ができてしまっているのです。

そこで数年前から富士通では役職離任者ばかりを集める子会社を設立しました。役職離任者を、まずは別会社に移すんです。要するに口減らしですね。役職離任者の仕事はこの子会社から提供されますが、これまでのキャリアを活かせる仕事はそう多くない。

ひどいケースでは、富士通のグループ会社が手がける工事現場の交通整理の仕事が斡旋されてきたこともあるそうです」

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役職定年の目的は、限りあるポストを社内でスムーズに回していくことにある。中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村勝氏が言う。

「大企業は、毎年大量の新入社員を採用するところが多く、どんどんポストを回していかないと、組織がうまく機能しません。

また、役職定年によって世代交代を行うことで、組織や人材の硬直化を防ぐ目的もあります。ポストの数は限られており、同じ人がずっとその地位に居続けると、下の人が昇進できなくなってしまいますから」

現在、企業は人手不足で、役職定年を見直して、シニア人材の積極的な活用に舵を切っている会社もある。しかし、これで中年管理職が安泰かと言うと、そうではない。