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絶対儲かるといわれたアパートローン「私はこうして破産した」

銀行員の言葉に ダマされて

「ウチでアパートを建てれば、賃料を固定で保証します」。夢のようなトークで巧みに近づいてくる不動産業者と、高額の建築費を簡単に貸し出す銀行の融資担当者。彼らは決して、我々の味方ではない。

入居者が減っていく

「お持ちの土地を活かしてみませんか。アパートを建てれば、管理と入居者募集の手間はすべてこちらでお引き受けします。さらに、契約中の30年間は一定の家賃収入を保証します」

東京から電車を乗り継ぎ約2時間の中部地方の某県。県庁所在地からさらに車を走らせること30分ほどの町。この地で長年農業を営んできたAさん(80歳)の元を、大手不動産会社B社の営業マンが訪れたのは、いまから十数年前のことだった。

 

その頃、Aさんはちょうど老後のお金の算段を思案していた時期だった。

営業マンが持参した資料には、一般のアパートの家賃はこの先年々下がる一方だが、この会社の「サブリース契約」でアパートを建てれば30年後も家賃収入は下がらないとするグラフがでかでかと印刷されていた。

サブリースとは、「転貸借」つまり家主が不動産業者に建物を賃貸し、不動産業者はその部屋をさらに第三者にあたる入居者に貸し出す、不動産業者は賃料を家主に支払うという契約形態のことだ。一般に「30年一括借り上げ」といった長期契約を売り文句にしている。

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「セールストークも魅力的で、いまから思えば都合のいい話ばかりでした。この地域には企業の工場が多いのですが、それらの工場労働者や転勤者にも需要があって、部屋は常に埋まると言われた。

専門家が資料を見せながらはっきりと『損することはありません』と断言するのだから、大丈夫なのだろうと思うようになっていきました」(Aさん)

アパートの建築費は約9000万円。ほぼ全額をB社から紹介された地方銀行のアパートローンで賄った。

「まだ半信半疑の部分があったので、銀行の融資担当者にB社の営業マンが持ってきた資料を見せながら『本当に問題ないのでしょうか?』と尋ねると、『これなら大丈夫』とあっさり太鼓判を押されたんです。こちらとしては、『銀行が言うのだから』と大船に乗った気持ちでした」(Aさん)

それから10年間にわたり、B社からは確かに契約どおり毎月65万円の振り込みがあった。ローンの支払いは月約36万円。そこからさらに諸経費を除いた20万円がAさんの収入になった。老後の貯えのための副収入としては、十分な金額だった。

ところが、時間が経つにつれてAさんのアパートの周囲には、B社による別のサブリース物件のアパートが次々増えていく。

「いくら単身入居者の需要があるとはいえ、狭い町にそんなに建てられたら飽和するのは目に見えている。担当営業マンには何度も『本当に大丈夫か?』と尋ねました。でも、彼は『僕を信用してください』と繰り返した」(Aさん)

だが、営業マンの言葉とは裏腹に、Aさんのアパートの入居者は減っていき、現在では約20戸のうち15戸近くが空室のままだ。ツートンカラーのアパートの玄関先には、業者が用意した『入居者募集』というのぼりが、虚しく風にはためく。