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Uberを窮地から救えるか? アリアナ・ハフィントンの挑戦

シリコンバレーの曲がり角で

CEO辞任の舞台裏

2017年6月20日、Uberの創業者であるトラヴィス・カラニックが同社のCEOを辞任した。

トラヴィス・カラニックUberの創業者トラヴィス・カラニック氏〔PHOTO〕gettyimages

年明けから立て続けに起こった様々な不祥事や醜聞に対して、Uberの出資者、すなわち投資家たちからの執拗な要求に押された形での退任だったのだが、カラニックが最終的に辞任を受け入れた背後には、ボードメンバー(取締役)の一人であるアリアナ・ハフィントンの影があったという。

彼女が諭したからこそ、カラニックは投資家――彼らの中にはボードメンバーを務める者もいる――との全面対決を避け、経営の最前線から去ることを選択したということだった。

上場前のUberにおいて、投資家と内戦を始めることは、結局のところ、Uberの自壊に繋がってしまう、それでは元も子もないでしょう、ここは大人になりなさい……そんなことをカラニックよりも27歳年長のアリアナは――カラニックは40歳、アリアナは67歳――囁いたのだという。

確かにCEOは退いたものの、創業者のカラニックは議決権をもつボードメンバーの一人であり続けている。アメリカの企業において、ボードメンバーの最大の役割は、彼らが出資する(=株を保有する)当該企業の経営の舵取りを行う「CEOの選任」にあるため、当然、その決定にはカラニックの承認も必要になる。

そしてボードミーティングにおいて、そんなカラニックの手綱を握るものとして、ここに来て俄然注目を集めてきているのがアリアナだ。近著の『スリープ・レボリューション』で、すっかり悠々自適の引退モードに入ったのかとばかりに思っていたのだが、まったくそんなことはなかったようだ。

Uberの未来を決める大任

もちろん、アリアナとはThe Huffington Post(HuffPo)――この4月から公式には“HuffPost”と名乗るようになった――の創業者である、あのアリアナ・ハフィントンだ。

アリアナ・ハフィントン氏〔PHOTO〕gettyimages

2005年にHuffPoを立ち上げ、瞬く間に民主党支持のリベラルなウェブニュースサイトとして頭角を現した。いわゆるウェブ・ジャーナリズムの立役者の一人であり、2008年の選挙では、民主党のオバマ大統領の誕生だけでなく、連邦議会の上院・下院の双方で民主党が多数党となる大勝利をもたらすのに貢献した。

同時にHuffPoもリベラルサイトとしての地位を確立し、その後はグローバル展開も試みるなど順調な成長を遂げ、その価値を見出したAOLによって2011年に買収された。

買収後もアリアナはHuffPoの編集者として活躍していたものの、最終的にはHuffPoからは退き、2016年には人びとの生き方の改善(ウェルビーイング)のために、Thrive Globalという会社を起業した。『スリープ・レボリューション』で力説した「健康の重要さ」を実現させるためのものだ。

スリープ・レボリューション

アリアナ自身、2007年に睡眠不足と過労により人事不省に陥った経験があり、その反省から「睡眠」の重要性に気づき、そもそも「睡眠を削ってまで仕事に取り組まなければならない」強迫観念から人びとを解放することを、次なる自分の役割と捉えていた。

そんなアリアナが、飛ぶ鳥を落とす勢いに乗るUber創業者のカラニックに出会ったのが2012年。

アリアナは、Uberのビジネスモデルの斬新さ以上に、その延長線上に、現在の多くの都市問題が解決される潜在力に感心したのだという。そこからカラニックとの交友を深めていき、遂には2016年4月、Uberのボードに加わることになった。