防衛・安全保障

稲田大臣辞任で終わらせてはいけない「日報隠ぺい」本当の問題点

これではトカゲの尻尾切り、だ
布施 祐仁 プロフィール

強い違和感

私も正直、自分が行った2本の情報公開請求が、よもやこんな「大事件」になるとは思ってもいなかった。もし、防衛相・自衛隊の最高幹部たちが2月13日と15日の会議で、陸自の日報保管の事実を隠すのではなく公表することを決めていれば、大臣と事務次官と陸上幕僚長が揃って引責辞任するような前代未聞の危機的な状況にはなっていなかったはずだ。

防衛相・自衛隊の最高幹部たちは「危機管理のプロフェッショナル」だ。当然、「隠す」ことのリスクは十分に理解していただろう。それでもなお、リスクを冒して隠す道を選んだところに、今回の日報問題の本質が潜んでいると私は思っている。

彼らは、何としても、「陸自では内規に従って日報は廃棄していた=情報公開請求に対して日報を開示しなかったことは隠蔽ではない」という説明ラインを維持しようとした。最初の隠蔽を隠すために、大きなリスクを冒して隠蔽の上塗りをしてしまったのである。これは、最初の隠蔽を発覚させないことが、彼らにとっていかに重要だったかを示している。

 

最初の隠蔽は、昨年7月に行われた。7月初め、自衛隊が活動する南スーダンの首都ジュバで政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘が勃発した。海外メディアは、戦車や戦闘ヘリも出動して激しい戦闘が行われ、数百人の死者が出ていると報じていた。しかし、日本政府は現地の状況について「散発的な発砲事案」「自衛隊に被害なし」とだけ発表し、「武力紛争は発生しておらずPKO参加5原則も崩れていない」と結論付けていた。

このギャップに疑問を抱いた私は7月16日、現地の陸自部隊が上級部隊である中央即応集団(CRF)司令部に報告したすべての文書を防衛省に開示請求した。今回公表された特別防衛監察の結果報告書によれば、開示請求を受けてCRFの担当者は日報を含む複数の文書を特定したが、上官であるCRFの堀切光彦副司令官(当時)が「日報が該当文書から外れることが望ましい」との意図をもって開示の対象から外すように指導したという。

そして、9月中旬、私には「人員現況」という、その日に活動した隊員の人数だけが記されたA4用紙1枚の簡易な報告用紙だけが開示された。その時は、現地で戦闘が起きているというのに、これしか報告していないのかと強い違和感を持った。

【PHOTO】gettyimages

その後、現地の部隊が「日報」を作成している情報をつかみ、9月下旬に、今度は「日報」と特定して改めて開示請求を行った。これに対しても、CRFは7月の前例を踏襲して日報を開示しないことを決定し、陸上幕僚監部と統合幕僚監部もこれを了承して12月初め、「既に廃棄しており文書不存在」として私に不開示を通知した。

だが、この時点では、該当する日報は「陸上自衛隊指揮システム」上の掲示板に行政文書として存在していた。このデータが消去されたのは、自民党行革推進本部長の河野太郎衆院議員が防衛省に日報の再探索を求めた後の12月中旬であった。いわば、「証拠隠滅」のためのデータ消去であった。