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企業・経営 週刊現代

元会長が激白!明治が泣く泣く「カール」から撤退するまで

「経営会議」は大紛糾した

国民的商品を捨てる!? 「カール」の東日本での販売停止が発表され、誰もが耳を疑った。合理的な経営判断か、小手先のリストラか――。決断の裏で、経営陣は苦悩していた。元最高幹部が初めて語る。

カルビーに負けた

カールは発売から四十数年、活躍してくれました。(東日本での販売中止は)非常に残念です。

ただ、このところ、皆さん騒いでくれる割には買ってもらえない。販売が終わると発表してから、騒ぐだけでね。もちろん、恨み節ではなく、商品として当然のライフサイクルだと思います。

(ネットのオークションサイトで一時、高値で取り引きされていたが)あれはさすがに、デタラメな値段だよね。『カール撤退』は、残念ながらカルビーのポテトチップスに負けたという歴史です。ポテトチップスのほうが売れていますから」

こう話すのは、明治ホールディングス(HD)相談役の佐藤尚忠氏(77歳)だ。

佐藤氏は明治製菓の社長として、同じ旧明治製糖の流れを汲む明治乳業との経営統合を仕切り、'09年に合併した後、持ち株会社・明治HDの初代社長、会長を歴任した。明治という会社の表も裏も知り尽くすキーパーソンである。

今年5月、明治はロングセラーのスナック菓子「カール」の生産を大幅に縮小し、西日本での生産・販売に限定すると発表した。日本国民に大きな衝撃を与えた「カール撤退」のすべてを、佐藤氏が明かした。

明治乳業との経営統合時、記者会見にのぞんだ佐藤尚忠氏(Photo by GettyImages)

「明治はチョコレートの売り上げが伸びていて、現在は生産工場が足りない状況にある。売り上げが低迷するカールの生産を西日本に集中させ、今までカールを生産してきたラインをチョコレート生産のラインに変更することは、経営判断としては当然です。

とくに('16年9月に発売した)『ザ・チョコレート』はおかげさまで、非常に売り上げが伸びている。はっきり言って、生産能力をチョコレートに振らないとまずい状況になっています。それは場所も人間も、です。

カールの生産ラインは非常にかさばり、多くの場所を使う。そこをチョコレートのラインにしていかないと生産が間に合わない状況なんです。うれしい悲鳴なんですがね」

佐藤氏は、あくまでも「カール撤退」は経営判断だと力説する。一方、カールが来年、発売50周年を迎える同社の「看板商品」であることも、また事実だ。撤退の背景に同社の複雑な社内事情があった、と指摘する専門家は少なくない。

 

経営評論家で、岡山商科大学教授の長田貴仁氏はこう言う。

「明治は'09年に明治製菓と明治乳業が合併して以来、事業統合を進めてきました。'11年には明治乳業が明治製菓の菓子部門を吸収する形で新会社『明治』を設立。明治製菓の薬品事業を分離し、『Meiji Seika ファルマ』として独立させました。

当初の目論見では薬品事業が明治ホールディングスを牽引するはずだったのですが、思ったような業績を上げていません。

その結果、旧明治製菓が明治HDの足を引っ張る形になり、『リストラ』の対象になったのが、カールだったのです。旧明治製菓の薬品事業が成果を上げられない中で、売り上げが激減しているカールがやり玉に挙がり、販売中止が提案されたということでしょう」