サッカー

Jリーグの新たな試み「ワールドチャレンジ」がもたらすもの

レベルアップが加速する

Jリーグは中断期間が明けて後半戦がスタートしました。セレッソ大阪は後半戦最初の試合は躓いたものの、暫定ながら12勝5分3敗勝ち点41で首位を走っています。C大阪は昇格プレーオフを制してJ1に復帰。プレーオフ組は昇格したシーズンに降格する傾向が強い中で、この順位は素晴らしい。好調の要因は守備的なポジションからトップ下にコンバートした“あの選手”ではないでしょうか。
 
C大阪は監督が大熊清さんからユン・ジョンファンに変わりましたが、J2を戦い抜いた昨年から大きなメンバーの変更はありません。新指揮官はテクニシャンの多いC大阪にハードワークを浸透させています。
 
そして今季、ボランチやセンターバックが本職の山村和也のコンバートが奏功しています。大学卒業後、鹿島アントラーズに入団しました。当時、大学ナンバーワンDFと呼ばれた山村ですが、鹿島でレギュラー奪取には至らず、C大阪に移籍しました。元々は守備の人です。前線からのファーストDFとしてのプレスのかけ方はさすがです。DF陣を前から助けています。
 
相手DFが嫌がる位置取りも巧みです。住友金属時代に僕の同僚でDFからFWにコンバートされた選手がいました。ポジショニングが抜群にうまかった。山村の動きを見ても“これをやられたらDFは嫌だな”“ここに入られたら嫌だな”とDF時の経験を前線で生かしているのがわかります。既にリーグ戦で7得点も記録しているのも頷けます

課題の見直しが重要

今季、Jリーグは新たな試みを始めました。海外の強豪クラブとJクラブを対戦させる「ワールドチャレンジ2017」です。今年は浦和レッズがドイツの強豪ドルトムントと、鹿島アントラーズがスペインの強豪セビージャと対戦しました。
 
浦和はドルトムントに2対3と敗れましたが、持てる力を全て出し切りました。序盤は相手ペースでしたが、試合が進むにつれてパス回しから崩す場面がありました。今季、リーグでは苦しんでおり、19節コンサドーレ札幌戦後にミハイロ・ペトロビッチ監督が解任されました。クラブの指揮を引き継ぐ堀孝史コーチを中心にドルトムント戦で明らかになった課題に目を向けて、復調のきっかけを掴んでもらいたいです。
 
一方の鹿島はセビージャから2対0で勝利を収めました。全体的には鹿島らしい試合でしたが、もっと前線からボールを奪いに行きたかったですね。セビージャのパス回しが巧みで、なかなかボールを奪えませんでした。何とかボールを奪えてもサポートできる距離に味方がいない。

いつもは2カ所、3カ所あるパスコースが強豪相手には1カ所しかつくれなかった。自力でキープする余裕もありません。奪った後のサポートの入り方を見直すべきだなと、感じました。
 
収穫もありました。18歳のMF安部裕葵です。後半27分に右サイドからボールを受けた安部はワンタッチで前を向いて1人かわすと、勢いに乗ってもう1人もかわす。最後はダブルタッチでさらに1人抜き去り、FW鈴木優磨へラストパス。鈴木が難なくゴールに流し込んで先制しました。今回の活躍で安部は自信をつけたことでしょう。リーグ再開となったヴァンフォーレ甲府戦でも1得点をマークしました。このままチームを引っ張れる選手になって欲しいです。
 
海外の強豪と対戦した後、チームでのすり合わせは本当に大切です。1993年のJリーグ開幕前、鹿島はイタリア遠征を行ないクロアチア代表と対戦する機会がありました。結果は1対8の大敗。その時はどんなにかわされても、前から奪いに行くことを徹底しました。奪いに行っても簡単にはたかれて、ワンツーで崩されてしまう。少しでもスペースを与えると自由にドリブルされてしまう。まるで大人と子供のサッカーでした。
 
そこから約10日間、DFの組織化、ラインの上げ下げ、攻守全体のバランスを徹底的に見直しました。遠征の最後にインテルと対戦し、1対1の引き分け。当時のインテルを1失点に抑えたことは自信になりました。帰国後にブラジルの強豪フルミネンセと2回ほど試合を行ない、1勝1分け。

特に2戦目、カシマスタジアムのこけら落としとなった試合ではジーコが先制点を決めるなど2対0で勝利しました。これで波に乗った状態でJリーグ開幕を迎えることができました。クロアチア代表戦の大敗で発覚した課題が、鹿島のベースになっていると言っても過言ではありません。
 
今後はJ1の上位クラブだけでなく、下位のチームも世界レベルを体感して欲しいです。そうすることでJリーグのレベルアップが加速し、日本代表の強化にもつながるはず。意識が上がらなければ技術レベルも上がらないと、僕は思います。