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空前絶後の「奇書」から知る、あの軍人の意外な評価と素顔

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辻田 真佐憲 プロフィール

軍人たちを悪魔化してはならない

『軍人おらが国さ』では、インパール作戦の強行で悪名高い牟田口廉也がべた褒めされているなど、まだまだ興味深い記述が多い。だが、今回はこのぐらいにとどめておく。

同書は、『陸海軍人国記』というタイトルで復刻されているので、ご関心の向きはそちらを当たられたい(本稿の引用も復刻版によった)。本来は出身地ごとに軍人を論評した内容であり、その名文にも唸らされる。

 

こうした伊藤の人物評は、あたっているところも外れているところもある。それを後世からあげつらうのは容易い。だが、それよりも、同時代の人物評がいかにむずかしいかに思いを致すべきである。

まして、軍人の場合、太平洋戦争で極限状態に置かれたため、その本性が醜いまでに暴かれた面があった。また、敗戦の結果、赤裸々な証言も出やすかった。そうした要因も忘れてはなるまい。

〔PHOTO〕gettyimages

ただ、こうも考えられよう。

「優秀だが、性格のキツイ官僚タイプ」や「過去の栄光にしがみつく、とぼけた重役」など、いまの世の中にもたくさんいる。かれらは、非常事態に陥ったとき、ときに思わぬ破廉恥な行為にでたり、すっとぼけた対応に終始したりする。

だが、それは驚くことではない。人間とは元来そういうものなのだ。

反対に、過去の軍人たちについてもむやみに悪魔化してはならない。かれらは、われわれの社会の延長線上に存在するからである。

今年も8月15日に向けて戦争企画が続出するだろうが、このことを心のどこかにとどめておいてもらえれば、軍人たちにたいする見方も少しだけ多面的になるかもしれない。