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規制緩和・政策 経済・財政

総務省がまとめた「あまりにバラ色」の白書に疑問アリ

驚きの急成長シナリオ

「GDPが725兆円に拡大」

にわかに脚光を浴びる「第4次産業革命」は、はたして日本復活の福音になるのだろうか。

総務省は7月28日に発表した情報通信白書(2017年版)で、第4次産業革命が「経済成長を年率2.4%押し上げ、2030年の実質GDP(国内総生産)は、内閣府が試算した数値を132兆円上回る725兆円に膨らむ」という威勢の良い将来展望を明らかにした。

同白書によると、高成長の原動力となる第4次産業革命は、あらゆる機器がネットワークにつながるIoT(Internet of Things、モノのインターネット)とAI(人工知能)の普及によってもたらされる。

関連する設備や機器への直接的な投資だけでなく、専門的な人材の雇用を増やしたり、日本企業が積極的にM&A(企業の合併・買収)に乗り出す効果が期待され、企業部門の生産性の向上や、家計部門の収入と消費の拡大が見込まれると、バラ色の未来を描き出している。

本当に、そんなバラ色のシナリオが実現するのだろうか?

人口減少が経済成長を阻害するばかりか、社会保障制度の破たんにもつながりかねないいまの日本にあって、もし本当にそのようなシナリオが実現できるなら、数少ない希望がもてる福音と言っていいだろう。そこで今回は、バラ色のシナリオの実現性と課題を考えてみたい。

 

「2030年に6300万人の雇用実現」?

まず、情報通信白書の内容を紹介しよう。第4次産業革命を経て、日本経済がどう成長するかを試算したことが、白書の目玉の一つだ。

内閣府の中長期経済予測は、2025年までの名目値しかないため、2030年まで延長して実質値に置き換え、それを基に、第4次産業革命に向けた日本企業の取り組みがあまり進まないケース(べースシナリオ)と、第4次産業革命に向けた取り組みが進展するケース(経済成長シナリオ)の2つを計算した。

その結果、2016年に522兆円だった日本の実質GDPが、2030年にはベースシナリオで593兆円、経済成長シナリオでは725兆円にそれぞれ達すると試算された。

ここで言う第4次産業革命は、IoTを通じて収集した膨大なデータをAIで分析して、生産性を向上させることを指す。

すでに一部の企業では、スマートフォンや各種のセンサーを使って、利用者動向を予測してタクシーを効率的に配車するとか、熟練工の判断に頼っていた製鉄過程をAIに置き換えるといった試みが始まっている。

「ウーバー」タクシー配車システム海外ではすでにスマートフォンを活用したタクシー配車サービスが広がっている photo by gettyimages

さまざまな企業がそうした活用の範囲を広げれば、生産性が飛躍的に向上するというのが白書の見立てだ。

ベースシナリオでは、第4次産業革命を積極的に取り込む企業が全体の6%(2016年)から18%に増えるだけだが、経済成長シナリオでは過半数(51%)を占めるという前提を置いた。

第4次産業革命は、企業による関連設備や機器への投資だけでなく、利活用に必要なデータ通信のトラフィックの増加、アプリケーション需要の拡大、M&Aの活発化などの波及効果もあり、実質GDPを大きく押し上げるという。

第4次産業革命に積極的に取り組む企業が増えれば、その分野の専門技術を身につけた人材が必要になり、就業者数の減少に歯止めがかかるとしている。そのため、2016年の就業者数は6440万人だが、ベースシナリオでは2030年の就業人口が5561万人と大きく減るのに対し、経済成長シナリオでは2030年に6300万人と高い水準の雇用を確保できるという。

また、第4次産業革命は、生産性の向上によって人手不足を解消する一方で、賃金を増加させたり、消費を拡大して新需要を創出する効果も大きいとされている。