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<ネット右翼十五年史>なぜ、彼らは差別的言説を垂れ流すのか

日本の「空気」を作る人々の研究
古谷 経衡 プロフィール
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寄生しているのはどちらなのか?

となると、必然、本稿での言及は有象無象のネット右翼たちに限ったことではなくなってくる。彼らの宿主である保守系言論人や文化人の具体的な名前にも、その筆致は及ばざるを得まい。実際、単に過去十五年間のネット右翼を追いかけるだけでは、十五年にわたるネット右翼史の全容を辿ることはできない。

ネット右翼が本格的に勃興することとなる21世紀に入って、日本の内閣は自民党政権だけで7回も変わり、民主党への政権交代も起こった。アメリカでは二つの巨大ビルがテロ攻撃で潰え、日本では未曾有の巨大地震と、有史以来経験したことのない原発過酷事故が現在でもその影響を大としている。

この間、我が国の保守系言論人や文化人は、その都度、或る事象にYESといい、時としてNOといった。それに寄生するネット右翼は、そのYESとNOをそのまま拡声器のように喧伝するだけでなく、それらに時として、より「強烈なYES」、より「強固なNO」と味付けすることで彼らに寄生していった。

そして悲しいかな、いまや寄生者と一体となった宿主が、誤解の余地もないほどストレートな差別的言説を、主にSNS上で垂れ流す事態も出来してきている。こうなると、どちらが宿主で、どちらが寄生者か分からなくなってくる。ここ十五年におけるネット右翼の歴史は、このようにひとくちに括ることのできない、複雑怪奇の道程を辿るのである。

次回以降は本格的に、保守系言論人や文化人の言論の変遷、そこに寄生する烏合のネット右翼の歴史を時系列的かつ有機的に捉えることで、わが国全体を巻き込む大きな社会問題となったネット右翼の実像を明らかにしてゆきたい

「第1回」となる次回は、ネット右翼が勃興する切っ掛けとなった2002年から時間をさらに巻き戻し、90年代後半からミレニアム前後にかけての我が国の政治情勢、およびネット右翼の形成に決定的な影響を与えることとなった小林よしのり氏の一連の作品群が大ヒットした時代ーーつまり「ネット右翼誕生前夜=Dawn of the Online right-wingers」の胎動を書き示すこととする。

                               (⇒第2回

古谷経衡(ふるや・つねひら)1982年生まれ。文筆家。保守派論客として各紙誌に寄稿する他、テレビ・ラジオなどでもコメンテーターを務める。2012年に竹島上陸。著書に『意識高い系の研究』(文藝春秋)、『草食系のための対米自立論』(小学館)、『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』(コアマガジン)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)他多数。
ノマドワーカー、ハロウィン、愛国女子…。SNSに巣食う彼ら彼女らはなぜ「面倒くさい」のか―著者自らの体験から紡ぎだす、衝撃の現代若者論。
 
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