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介護 認知症

裁判所が選ぶのに…「後見人」の高額請求に「強制力」はなかった!

成年後見人制度の知られざる闇 第2回

認知症の父母に裁判所がつけた後見人は、見も知らぬ弁護士や行政書士。彼らは自分が後見している父母にろくに会いもせず、裁判所のお墨付きがあるからと、高齢者の口座から毎年報酬を引き落としていく。その額、年間数十万円……。だが、その引き落としには、法的強制力はなかった!?

隠れた社会問題に迫る連続レポート第2回(第1回はこちら)。

「母のために何もしていないのに…」

「家庭裁判所が母の成年後見人に選任した弁護士は、後見人に就任してから3ヵ月もたって、初めて老人ホームに入っている母と会いました。娘の私が、何度も『母と会ってください』と電話で頼んで、ようやくやってきたのです。

ところが施設に来はしたものの、母と会ったのはたったの1分だけ。母の部屋をちらっと覗いた程度で、『忙しいから』と帰ってしまった。

その他で弁護士がやっていることと言えば、母の通帳を管理しているだけです。そして、母のためになることは何もしていないのに、毎年多額の報酬を母の銀行口座から引き出しているんです」

2年前、見も知らぬ弁護士を、認知症の母親の後見人につけられた女性の話だ。

そもそも女性は、自分が認知症の母親の後見人になるつもりで、家裁に成年後見制度の利用を申し立てた。だが家裁は、女性がまったく知らない弁護士を、母親の後見人に選任した。

成年後見の在り方を記した民法858条には、後見人の責務として、認知症高齢者の意思を尊重し、心身の状態や生活の状況に配慮しなければならないと定めている。これは「身上監護義務」と呼ばれ、成年後見制度の根幹をなしている。

ところが現実には、この弁護士のような専門職が後見人につくと、世話をする相手の認知症高齢者とほとんど会わず、生活の質の向上にも何の関心も示さないことが珍しくない。彼らがやることといえば、通帳管理と、年1回の家裁への後見状況の報告書作りだけだ。後者の作業にしても、実働には1時間もかからない。

これでは冒頭の女性のように「母のために何もしていないのに、なぜ多額の報酬を」などと家族が不満を持つのも当然だ。だが全国の家裁は、こうした家族の不満を承知のうえで、年を追うごとに弁護士や司法書士といった「専門職」の後見人を増やしている。

裁判所の責任逃れ? 主流になった専門職後見人

実際、成年後見制度がスタートした2000年には、後見人の9割は家族などの「親族後見人」が占めていた。ところが現在は「専門職後見人」が全体の7割を占めている。

なぜ、そんなことになったのか。背景には、親族後見人による不祥事が多発したことがある。制度発足当初、家裁は親族を後見人に選任していた。だが、親族による横領事件が頻発し、選任した家裁の監督責任が問われた。

すると、「羹に懲りてなますを吹く」の喩え通り、成年後見制度の仕組みを作った最高裁家庭局とその管轄下にある全国の家庭裁判所は一斉に、親族後見人ではなく第三者の専門職を後見人につける方向に舵を切ったのだ。

だが、専門職後見人がつくようになって不祥事がなくなったかといえば、実はそうではない。公平性を期待された専門職も、横領事件を頻繁に引き起こしている。

 

たとえば、2015年10月には認知症男性の後見人をつとめていた弁護士が、男性の口座から1830万円を横領し、名古屋地検特捜部に逮捕されている。この年、弁護士らによる横領は、過去最悪の37件に達した。

それでも最高裁と家裁が専門職を後見制度の柱にする方向を変えないのは、同じ不祥事でも専門職後見人が起こしたものならば、本来は家裁が負うべき監督責任を、弁護士会や司法書士会といった職能団体に丸投げし、回避できるからではないかという指摘もある。